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“J7”ながらJ百年構想クラブ入り。
南葛SCとキャプテン翼と葛飾の夢。 

text by

飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byAkihiro Serikawa

posted2020/03/22 20:00

“J7”ながらJ百年構想クラブ入り。南葛SCとキャプテン翼と葛飾の夢。<Number Web> photograph by Akihiro Serikawa

高橋陽一先生(右)、岩本GMと南葛SCの横断幕。翼くんとともに、将来的なJリーグ入りへ羽ばたこうとしている。

元鹿島・青木剛も昼に仕事をしながら。

 前年、現役に復帰してもらった福西に監督就任を要請し、フルタイムで指導できない福西をサポートするため、柴村にプレーイングコーチになってもらった。北海道コンサドーレ札幌や愛媛FCで活躍した石井謙伍、元鹿島アントラーズの佐々木竜太など、元Jリーガーを次々と獲得もした。

 さらに、大きな話題となったのが、元日本代表選手の加入である。鹿島やサガン鳥栖などでプレーした青木剛が南葛SCのユニホームに袖を通すことになったのだ。

 加入してしばらくした時期に、青木はこの挑戦についてこう語った。

「一時は現役引退も考えたんですけど、縁があって南葛に加入させてもらいました。みんな、昼間に仕事をしながら、サッカーを続けている。サッカーが大好きなんだなって感じるし、そんな環境にいて、自分も刺激をもらっています」

 '19年1月には後援会長を務めていた高橋氏がオーナー兼代表取締役に就任する。

 いわば、J1への本気のチャレンジ元年――。

 リーグ開幕前の'18年12月から'19年2月にかけて行なわれた東京都社会人サッカーチャンピオンシップ、通称「東京カップ」では、二次戦の決勝まで勝ち上がる。J1へのチャレンジは前途洋々に見えた。

 だが、その先に、落とし穴が潜んでいた。

独特なリーグの中にあった難しさ。

 カップ戦決勝進出で油断が生じたのか、リーグ戦が開幕すると、初戦で明治学院スカーレットと引き分け、4節の駒澤大学GIOCO世田谷戦で足元をすくわれた。大学生に不覚を取って危機感が芽生えたチームはその後、復調したものの、勝てば2位に浮上する7月28日の11節・アストラ倶楽部戦で、一瞬の隙を突かれて0-1で敗れてしまうのだ。

「圧倒的に支配はしていたんですけど、最後にカウンターでやられて、順位を6位に落としてしまった。この試合のあと1カ月、中断期間に入るんですけど、2位と6位では全然違う。残り4試合の相手は上位陣ばかり。焦りが出てしまって……」

 最終的に、6勝4分5敗で、リーグ7位に終わった。

「元Jリーガーを増やしたものの、Jと社会人リーグの違いとか、このリーグのことをあまり知らないとか、いろいろ誤算が生じてしまった。僕の見通しが甘かった。福西さんにとっても難しかったと思います。大学生も混ざった独特なリーグだし、うちのチームにも元プロとアマが混在している。どこまで教えて、どこまで任せればいいか、判断が難しかったと思います」

【次ページ】 柴村との別れ、風間イズムを知る男。

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