Jをめぐる冒険BACK NUMBER
“J7”ながらJ百年構想クラブ入り。
南葛SCとキャプテン翼と葛飾の夢。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAkihiro Serikawa
posted2020/03/22 20:00
高橋陽一先生(右)、岩本GMと南葛SCの横断幕。翼くんとともに、将来的なJリーグ入りへ羽ばたこうとしている。
W杯イヤーに全員と膝を突き合わせて。
さらに、松本山雅FCやカターレ富山に所属したブラジル人ストライカーのカベッサ、ガンバ大阪や東京ヴェルディでプレー経験のある安田晃大の獲得にも成功した。
春から夏にかけては選手全員と面談を行なった。
'18年と言えばワールドカップイヤーである。メディアの仕事や高橋氏との事業で岩本GMのスケジュールは埋まっていたが、間隙を縫って全選手と膝を突き合わせた。
「ほとんどの選手たちが仕事をしているので、職場や自宅の近くまで足を運んで。クラブの方針の話がメインですけど、ときに仕事や人生についての相談に乗ったり。だいたい、ひとりにつき1~2時間、多いときで1日に8時間くらい話をしました(苦笑)」
さらに8月末には、元日本代表MFの福西崇史を現役に復帰させ、勝負を掛ける。
こうしたトライが奏功し、南葛SCは昇格1年目にして東京都1部で優勝し、関東社会人大会出場を決めるのだ。
ここで優勝すれば、関東リーグ2部への昇格が決まる。そんな勝負の大会で、思わぬ奇跡が起きた。
「南葛vs.東邦」にしたことで炎上。
初戦で与野蹴魂会を下した南葛SCの準々決勝の相手は、東邦チタニウム――。
『キャプテン翼』で大空翼のライバルである日向小次郎の所属チームの名前は東邦学園だった。奇しくも南葛vs.東邦という漫画の世界が現実のものになったのである。
だが、このカードをめぐって、SNS上ではちょっとした騒動が巻き起こった。いわゆる炎上である。
「もともと電光掲示板には『南葛SC』『東チタ』と表示されていたんです。ただ、電光掲示板が小さくて見えにくかったから、大会の関係者と話し合って、2文字のほうが見やすいだろうと。そうしたら、東チタさんも問題ないと。ただ、僕のツイートが言葉足らずで、僕が表示を変えさせたと誤解を生んでしまって(苦笑)」
'18年11月4日に行なわれたこの試合を0-1で落とし、関東2部への昇格はお預けとなったが、GMに就任してまだ1年目。コーチングスタッフや選手など、自身のこだわるメンバーを揃えられたわけではなかった。
それにもかかわらず、ぶっちぎりで東京都1部を制したことに手応えを掴んだ岩本GMは、就任2年目となる'19年シーズンに向け、妥協なき編成を試みる。
「負けた翌々日に高橋先生と話し合って、2つ上のカテゴリーでも優勝争いできるようなチーム編成をしましょうと。本気でJ1を目指しましょうと確認しました」