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新型コロナウイルスと開幕延期。
アメリカ野球の復元力に期待する。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2020/03/16 20:30
3月12日、試合後手を消毒するマイアミ・マーリンズの選手。この日、オープン戦の中止シーズン開幕戦の延期が決まった。
ジフテリアやジカ・ウイルスとも戦った。
アメリカ野球が疫病と戦ってきた実例は、ほかにもいくつか残されている。
1944年にカーディナルスの名物コーチだったバジー・ウェアズがジフテリアを発症した際、チームは検疫のための隔離期間を設けた。
2016年、リオ五輪を危うくしたジカ・ウイルスが問題視されたときは、プエルトリコで開催されるはずだったマーリンズ対パイレーツの試合会場がマイアミに変更された。
ただ、今度の新型コロナウイルスに関しては、警戒感が一挙に高まった印象がある。
3月9日には、ロッカールームやクラブハウスへの報道陣立ち入り禁止が告げられた程度だったのに、3日後の12日には「オープン戦の中断」と「開幕の延期」が電撃的に発表された。これで当分の間、われわれは野球の不在を実感しながら日々を過ごしていかざるを得なくなる。
ストライキで中止、野茂英雄の登場。
思えば大リーグは、いままでにもシーズンの短縮や中断を何度か経験してきた。
1972年4月には全選手がストライキに入り、開幕後9日間、すべての試合が中止になった。81年には、6月12日から7月31日まで、50日間のストライキが実施された。
そして94年には、やはりストライキのため、レギュラーシーズンが8月12日に終了し、ワールドシリーズも中止に追い込まれた。そのあおりで、翌95年の開幕は4月25日にずれ込み、年間試合数も144にとどまっている。野茂英雄が大リーグにデビューし、旋風を巻き起こしたのは、その95年のことだった。
これ以外にも、天災や事件による中断もいくつかあった。89年には北カリフォルニアを襲った大地震で、ワールドシリーズが10日間中断された。2001年9月11日に同時多発テロが起こったときは、レギュラーシーズンが1週間中断されている。