スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
新型コロナウイルスと開幕延期。
アメリカ野球の復元力に期待する。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2020/03/16 20:30
3月12日、試合後手を消毒するマイアミ・マーリンズの選手。この日、オープン戦の中止シーズン開幕戦の延期が決まった。
「ベースボールはメディスンだ」
もちろん、今回のケースは過去に前例のないものだ。ただ、一部の人が固執する「年間162試合」という数字にさえこだわらなければ、野球が復活する余地は十二分に残されている、と私は思う。
そのためには、疫病を侮らず(歴史を見ても、第2波、第3波の襲来は十分に考えられる)、なおかつ、レギュラーシーズンという長丁場を乗り切るだけの基礎体力作りを怠らないことだ。
感染者数の比較的少ない温暖なアリゾナやフロリダでの長期滞在トレーニングを決めた球団がいくつか見受けられるのは、賢明な判断だと思う。
過去を振り返っても、恐慌や戦争のあと、野球という「ナショナル・パスタイム(国民的娯楽)」はアメリカ社会や人心をじっくりと治療する役割を果たしてきた。その復元力は、いまなお残っているはずだ。
経済活動の縮小に頭を抱える人たちは球界にも多いだろうが、ここは我慢のしどころだろう。焦りがもたらす拙速な判断を避け、6月か7月まで辛抱するつもりでいれば、野球はきっと戻ってきて、人々の生活を支えるにちがいない。
かつて、映画作家のケン・バーンズは「ベースボールはメディスンだ」と言った。私もそう信じたい。