欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
板倉滉の反骨心を刺激する、
長谷部誠の言葉と“リツ”の存在。
text by
本田千尋Chihiro Honda
photograph byGetty Images
posted2020/03/15 11:30
激しくボールを奪い合う堂安律と板倉滉。同世代にして共に日本代表の選手同士の勝負が欧州でもっと増えれば……。
「次どうなるか全然分からない」という恐怖。
もっとも、板倉の中で“懸念”のようなものがないわけではなかった。後味の悪い敗戦となったフェンロ戦の後で、次のように話していた。
「とにかく勝つことだけを本当に意識していたので、そういった意味では悔しいですし、次どうなるか全然分からないですし、そこは気を引き締めて、またしっかりやる必要があるかなと思います」
「次どうなるか全然分からない」。今日この試合でパフォーマンスが良かったからといって、「次」の試合でも使われるかは監督以外誰にも「分からない」。
この板倉の置かれた状況を、“理不尽”の一言で片付けるのは簡単だが、「サッカーの世界」においては十分にあり得ることでもある。
一見するとそのチームで絶対的な選手であっても、何かの拍子で先発を外されることや、他の選手にポジションを奪われることは、常に起こり得ることなのだ。
「変わった時にしっかりとアジャストする」
例えば、アイントラハト・フランクフルトで確固たる地位を築いた長谷部誠も、後半戦に入ってアドルフ・ヒュッター監督が4バックを本格的に導入したことで、以前よりも先発の機会が減っている。リベロのポジションがなくなったことで、長谷部はアンカーとして考えられるようになったのだ。
しかし、こうした状況の変化にも、欧州での経験が豊富な“先駆者”は、慌てるようなそぶりを見せない。
後半戦に入って初めてベンチ入りとなった1月25日のRBライプツィヒ戦の後で、長谷部は「自分の中でどっしり構えている感じはあります」と言った。
「ヴォルフスブルクでは試合に出たり出なかったりしたことが頻繁にあって、ニュルンベルクでプレーしていたときも怪我で試合を離れていたときがありました。
ずっと試合に出ているときよりも、ベンチスタートや出番がない時の方が体の調整の仕方や気持ちの持って行き方ですごく難しい部分もありますけど、ただ、もちろん自分も色々と経験してきている。
本当にサッカーの世界の状況はすごく早く変わるもの。変わった時にしっかりとアジャストする、再びチャンスが来たときにしっかりと示すことが大事だと思います」