欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
板倉滉の反骨心を刺激する、
長谷部誠の言葉と“リツ”の存在。
text by
本田千尋Chihiro Honda
photograph byGetty Images
posted2020/03/15 11:30
激しくボールを奪い合う堂安律と板倉滉。同世代にして共に日本代表の選手同士の勝負が欧州でもっと増えれば……。
「残りの7試合しっかり全部出るつもりで」
この長谷部の「サッカーの世界の状況はすごく早く変わるもの。変わった時にしっかりとアジャストすることが大事」という言葉を、ウィレムII戦の後で板倉に伝えてみたところ、我が意を得たり、といった様子だった。
「いや、もう本当にそうだと思うし、今日負けているので、また状況がコロッと変わるかもしれないし、そのままかもしれない。そこは分からないですけど、やり続けることが大事かと思います。
もちろん自分の気持ちとしては、残りの7試合しっかり全部出るつもりでやりたいと思っていますし、練習からしっかりやっていきたいと思います。次の試合もしっかり出て、PSV相手にしっかりやれるところを見せる。まずはそこを目標にやるしかないと思います」
まるでこの日のティルブルフの荒れた天候のように、いつも「サッカーの世界の状況」は慌ただしく、板倉の周囲もなかなか落ち着かない。だが、偉大な“先駆者”の言葉を借りれば、「サッカーの世界」で重要なことは、どんな時でも決して自分を見失わず、物事に誠実に取り組み続けること、といったところだろうか。
逆境からの復活を目撃できた。
しばらくすると、彼の中で蠢いていた“何か”は落ち着きを取り戻し、決意が固まったようだった。
そして1週間後のエールディビジ第26節。ホームで迎えた対PSV戦――そこには板倉の名前があった。
逆境に置かれても“反骨心”を武器に戦う日本人CBは、再び先発の座を掴んだのである。もちろん彼がスタメンに戻ってきたのは、練習で力を示して、バイス監督を納得させたからだろう。
試合は16分にオーバーラップしたデンゼル・ダンフリースに決められた1点を覆すことができず、0-1で敗れることになったが、格上相手にもフローニンゲンは臆することなく果敢に戦った。
右SBのデヨファイシオ・ゼーファイクは、“旧友”の堂安律と1対1でゴリゴリと激しくやりあい、板倉もウインガーのノニ・マドゥエケの仕掛けに対して強さをみせるなど、終始アグレッシブな姿勢を見せた。安定したビルドアップと、強気の低い弾道のロングフィードを見せつつ、後方からPSVを食ってやろうとするチームの戦いを支えた。