“Mr.ドラフト”の野球日記BACK NUMBER
センバツ中止の結論に文句はない。
だが32校をそのまま放置していいか。
posted2020/03/12 15:00
text by
小関順二Junji Koseki
photograph by
Kyodo News
センバツ大会が中止になってしまった。
中止が決定する前に新聞社からコメントを求められたとき、「他のスポーツの全国大会が中止になっているのにどうして高校野球はそうしないんですか」「高校野球は特別なんですか」と言われ、私は「高校野球は特別なんです」と答えた。
結果的にセンバツ大会は中止になり、その結論に文句はない。ただ、「高校野球は部活なんだから他の競技のように大会を中止するのは当然」と言う意見には少々文句を言いたい。
センバツの始まりは大正13年。
夏の甲子園大会がスタートを切ったのは1915(大正4)年である(第1~2回大会は豊中グラウンド、第3~9回は鳴尾球場で行われ、第4回大会は米騒動で中止)。その9年後の1924(大正13)年に名古屋市の山本(八事)球場で行われたのがセンバツ大会の始まりで、翌'25年から甲子園球場に舞台を移し、今回が第92回大会になるはずだった。
夏の大会が甲子園球場で最初に行われたのは1924年からで、このときは6万人収容のスタンドが観客で埋まるかどうか危ぶまれたが、3日目に早くも大入り満員となった様子がビデオ作品『夏の甲子園 不滅の名勝負 1915-2002』(企画・発行/朝日新聞社、朝日放送)に紹介されている。
1924年に現在のプロ野球はまだ誕生しておらず、他の娯楽も現在のように多彩ではない。そういう時代にあって高校野球は春、夏の風物詩として国民から圧倒的な支持を受けた。
高校野球は、そういう長い伝統と甲子園での大会規模を考えると、長年、スポーツという枠を越えた社会的行事としての任を負ってきていたと思う。今回は生徒・選手の安全第一ということで中止となったが、国民にとって、野球や部活というジャンルを越えるような、大きくて特別なイベントだったと私は認識している。
だからこそ「野球部も他の高校生の部活と同じでしょ」と単純化して答えをすぐに出せるほど、この決断は簡単ではなかったはず……と個人的には言いたいのだ。