マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
10年で一番見たかったセンバツ。
無観客だったら伝えたかったこと。
posted2020/03/13 11:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
天気さえ良ければ、5時をまわってもまだ余裕で練習できるぐらいの明るさに、ずいぶん陽が長くなったなぁ…と思いながら、
「だけど、野球やってないんだよな~」
と、首を垂れる。
3月の予定表が、黒の横線だらけになった。
今季アマチュア野球最初の公式戦・社会人野球のスポニチ大会が中止になり、大学ジャパンの候補合宿(平塚)も止めになって、楽しみにしていた高校野球の練習試合や大学のオープン戦も、ほとんどが予定表から消えてしまった。
この時期、関東のチームと試合をしにやって来る高校、大学の監督さんたちには、1年に一度会えるかどうかの人も多く、とても楽しみにしていたのだが「新型コロナウィルス」などという見えざる難敵が、すべてをパーにしてくれた。
そういえば、何年かぶりに集まることになっていた旧友との会も、毎年決まってこの時期にあった球友との飲み会も、全部“自粛”になった。
ここ10年でいちばん見たかったセンバツ。
そして、春はセンバツから……そんなキャッチフレーズも懐かしいこの時期の風物詩「センバツ高校野球」も、その開催がとうとう取り止めになってしまった。
個人的には、ここ10年で、いちばん見たいセンバツだった。
去年の奥川恭伸(星稜→ヤクルト)や、一昨年の根尾昂、藤原恭大の大阪桐蔭のような「目玉」ははっきりと定まらないものの、この先夏の甲子園までに高校球界のトップリーダーになれそうな資質を持った選手たちがたくさん出場するのが、今年のセンバツだった。
出場校の顔ぶれもなかなかに華やかで、近年になく胸躍るセンバツだっただけに、開催中止は残念でならない。