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日本ラグビーの交渉役、藤井雄一郎。
<後編>サンウルブズの可能性と存続。 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byGetty Images

posted2020/03/16 11:55

日本ラグビーの交渉役、藤井雄一郎。<後編>サンウルブズの可能性と存続。<Number Web> photograph by Getty Images

来季以降のスーパーラグビー離脱が発表されているサンウルブズ。藤井氏は、チーム存続へ向けた交渉の余地はあると話した。

まだどうなるか分からない。

――とはいえ、サンウルブズは今季を最後に除外されることが決まっている。

「いや、僕は内心、まだどうなるか分からないと思っています。除外が決まったのは昨年3月ですが、世界のラグビーにおける日本の立ち位置は昨年のワールドカップで劇的に変わった。それを踏まえた交渉はまだ誰もしていないんです。前体制はSANZAARからの通告を受けたときに『これは決定事項だ』と、何の交渉もしなかった。

『SANZAARはすべてカネで動く、あんなカネは出せない』と言う人もいますが、商売を優先するならなおさら、日本を巻き込んだ方が価値があがる。『そうした方がアナタも得するよ』と口説けば、まだまだ情勢が変わる可能性はある。来年をどうできるかはさすがに難しいタイミングになってきましたが、2年後、3年後を考えれば、そこまで見込んだ交渉をするべきです。2年後に復帰できれば、次のワールドカップへの準備には十分つなげられる。

 もちろん、日本協会がサンウルブズの価値を再評価する必要はあります。財務の安定は不可欠なので、協会およびスポンサーによる財政的支援は必要です。一方で、今年すでに、トップリーグ企業での安定した雇用を離れてでも挑戦しようとする選手が出てきている。日本人コーチも貴重な経験を積んでいる。今まで見えていなかった部分でも、メリットは大きくなっている」

3つのカテゴリーで回していくのはどうか。

――今年のサンウルブズにも、安定した雇用を捨ててでも挑戦しようという日本人選手がたくさん出てきていますね。

「そもそも、昨年のワールドカップでの日本代表の躍進は、間違いなくスーパーラグビー参戦の賜物です。これは誰も否定できないでしょう。それを選手は分かっているから、トップリーグを離れてでもサンウルブズでプレーしたいと思う選手がたくさん現れた。 

 僕は、日本協会が明確なビジョンを打ち出すべきだと思う。これは僕の私案ですが、日本のラグビーカレンダーは日本代表、スーパーラグビー、そして国内のトップリーグあるいは今検討されている新リーグという3つのカテゴリーで回していくのがいいと思うんです。

 スーパーラグビーには日本から3チームが出る。1チームのスコッドが40人として、120人がスーパーラグビーの強度を経験できる。そこから30人が日本代表に行くとして、残りの90人はトップリーグあるいは新リーグのチームに行けば、国内リーグのレベルも確実に上がる。リーチ(マイケル)や堀江翔太が一時期バーンアウトしそうになっていたように、選手が日本代表とスーパーラグビー、国内リーグの3つを掛け持ちし続けたらパンクしてしまうけれど、ふたつでプレーするなら持続可能です。

  経験も積んで、家族との時間も大切にしたい時期がくれば、スーパーラグビーは退いて国内リーグと日本代表のふたつに専念するという選択肢もあっていい。そもそもトップリーグは、ニュージーランドや南アフリカの選手にとっては前からそういう位置づけだったんですね。これからは日本の選手にとってもそうなっていけばいい。
  
   逆に、若い選手はどんどんスーパーラグビーにチャレンジしてほしい。そうすればトップリーグあるいは新リーグも活性化してレベルも価値もあがるし、スーパーラグビーも含めた選手の経験値も上がる。選択肢も増える」

【次ページ】 日本ラグビーは価値を売るべき。

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