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日本ラグビーの交渉役、藤井雄一郎。
<後編>サンウルブズの可能性と存続。
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byGetty Images
posted2020/03/16 11:55
来季以降のスーパーラグビー離脱が発表されているサンウルブズ。藤井氏は、チーム存続へ向けた交渉の余地はあると話した。
「サンウルブズは貴重な存在なんですよ」
――確かに、海外勢にとっては、日本で1試合をするためだけに地球を半周するよりも、2試合した方がコストパフォーマンスがいいし、選手の体への負担も少ない。ワールドカップで日本のラグビー環境が整っていることは世界に証明されたし、日本でのマーケット開拓というメリットもありますね。
「実は、今のトップリーグにも、単独でスーパーラグビーに参戦したいと言っているチームは複数あるんですよ。
いま、スーパーラグビーで観客が入っているところは本当に少ないんです。サンウルブズはすごく貴重な存在なんですよ。オーストラリアなんて本当に苦しんでいる。その中で、南アフリカはヨーロッパとの結びつきをより強めている。放映権料を考えると、やはり生中継でたくさんの人が見られるタイムゾーンを共有していることが大きいんです。ちょっと長い目で見ると、南アフリカはスーパーラグビーを離れる可能性がある。
そうなった場合を考えると、オーストラリア、ニュージーランドにとっては日本のチームを入れることにはメリットがあるんです。日本はスーパーラグビーの価値向上に貢献できるということをもっとアピールしていかなきゃいけない」
ヌタマックは20歳でW杯を経験。
――日本にとってもメリットはありますよね。
「もちろんです。特に大きいのはユース育成の面です。やはり、プロチームがないと育成が進まないんですよ。プロチームがユースチームを持って、ユースの選手を育成すれば、選手の情報も共有しやすいし、U20などのユースチームも作りやすい。海外の大会に参加したり、海外のチームに留学させることもやりやすい。
今のシステムだと、選手がバラバラに大学に行くから、どうしてもその大学のカリキュラムに縛られる。試験があればそこは外せないし、トップリーグの企業に入れば、研修があったりする。人生設計でそっちを選びたい選手はそうしていいけれど、現在はプロとして、競技に集中したいと思っている選手がたくさんいる。そういう選手に選択肢を示してあげないといけない。
今の日本では、大学を卒業した22~23歳か、少し実績を積んだ27~28歳くらいでプロになる選手が多い。だけど、戦う相手は18~19歳からプロでラグビーに専念しているような選手ばかり。そこに勝とうとするわけですからね。大学にいく選手もいていいと思うけれど、みんながそうでは世界で戦えません。
日本では、たとえば中村亮土は28歳で初めてワールドカップに出たけれど、フランスのヌタマックは20歳で初めてのワールドカップに出た。28歳で3度目のワールドカップに出るわけです。これからはそういう相手に本気で勝とうとするんですから、人材育成のプロセスを、見えやすく、シンプルに作っていくことが、これから求められているところだと思います」