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日本ラグビーの交渉役、藤井雄一郎。
<前編>ジョセフHC再契約の裏側。
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byNobuhiko Otomo
posted2020/03/16 11:50
ジェイミー・ジョセフHC(左)と並んで会見に出席する藤井雄一郎強化委員長。2023年フランス大会へ向けて、日本ラグビーは再び歩みを進めている。
ジョセフの想いとスポンサード。
「そしてジェイミーは、ニュージーランドの派閥争いに巻き込まれたくなくて、オールブラックスのオファーを断る理由がほしかった。だから日本とサインしたがっていたんです。とはいえ、NZ側の提示があまりにも良かったら、なかなか断ることもできない。だから日本も、それなりのものを提示しなければいけない。
ここには『どっちはいくら用意した』というような報道も絡んできて、それぞれの提示額が1日単位で変わってしまう。日本協会の立場では、『ガバナンス上の手続きを踏まなきゃだめだ、1カ月待ってくれ』と言う。でもそれを待っていたら契約は取れません。契約の交渉ではスピードが誠意なんです。だから最後は、会長、副会長にお願いして、できる限り協会に負担がかからないようにするから、ということで飲ませて、決めました」
――協会に負担のかからない契約とは。
「わかりやすく言えばスポンサーですね。実際のところをいえば、今までについても、サニックスがジェイミーにそれなりの額を出していたんです。これは、1990年代にジェイミーがサニックスでプレーしてくれた恩義、それ以来のつながりを大切にしていたからです。日本協会として出せる金額が決まっていた以上、どこかから上乗せ分を持ってこないといけない。その分を企業が負担していたのが実情なんです。その前も、前の前も、似た感じだったと思いますよ」
クリエイティブな視点とスピード。
「これはニュージーランドでも同じで、オールブラックスと契約する時点で、アディダスからいくら、AIGからいくらが入って、トータルで何億円に相当する収入が保証されている……というような契約になっているんですね。ヘッドコーチの契約は協会が負担する年俸だけで決まらないんです。海外のメディアで報じられる契約額は、ほとんどがそういうスポンサーマネーを含んだ数字です。
そういうことを、日本協会の人事は知らなかったんですが、それはしかたないことだと思う。ただ、次のステップに行くには、先を読んで動ける、クリエイティブな視点を持った人が必要だと思いますね。これから大切なのはスピードですから」