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日本ラグビーの交渉役、藤井雄一郎。
<前編>ジョセフHC再契約の裏側。
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byNobuhiko Otomo
posted2020/03/16 11:50
ジェイミー・ジョセフHC(左)と並んで会見に出席する藤井雄一郎強化委員長。2023年フランス大会へ向けて、日本ラグビーは再び歩みを進めている。
「日本、すまんな」という雰囲気で。
――ワールドカップが終わって、結果を見て、理事会を開いてみんなで評価を協議して、続投要請を出すかどうかを決める、あるいは本人の意向や所属企業の意向を聞いたりして決める、というやり方でした。
「僕はワールドカップで3勝した時点で、もう一度『契約延長していいか』と聞いたけど、やっぱりOKは出なかった。意思決定機能が確立していなかった。ただ、これは仕方ないことだと思います。みんな、どんなことが起こるか、世界ではどんなことが起きているのかを知らなかったわけですから。誰かのミスだったとか、責めるようなことではない。
結局、ワールドカップが終わってから、僕が『一任してもらえるなら』ということで交渉役を引き受けました。協会の手続はスピード感がないんです。こういう交渉事にはスピード感が必要。1日、2日で決めないと何も進まないんです。それで、全権を持って11月にNZへ行きました。
でも、そのときにはNZ国内は『オールブラックスの次期HCはジェイミーだ』という空気になっていたんです。『日本、すまんな』という雰囲気で、僕も会う人会う人から、そんな感じで声をかけられました」
先にトニー・ブラウンに交渉した。
「実は、そのちょっと前に、NZ協会の副会長が日本に来ていて、ジェイミーにも会っているんです。NZ協会の次の会長候補の一人だった人なんですが、この人がオタゴ出身なんです。ジェイミーもトニー・ブラウンもオタゴですから、彼にとっては扱いやすいだろうという思惑があったんでしょう。
NZ協会も、けっこう派閥があるんです。でも、それが日本には幸いした面もあったんですね。ニュージーランドが手を挙げたことで、他のところが諦めて引いた面もありました。
あとは、直接の交渉ですね。実際の交渉手順を少しだけ明かすと、僕はまずブラウニー(トニー・ブラウン)にオファーを持っていったんです。あそこは奥さんが強いですから(笑)。奥さんの意向を考えれば『このオファーはとても蹴れない』と思わせるくらいの条件をまず出した。そしたら、ブラウニーは『オレはジェイミーとやる』と言った。ブラウニーはヘッドコーチじゃなく、現場に専念したいタイプで、そのためにはジェイミーのようなボスと一緒に組んでいたいんです」