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流大とも田中史朗とも違う“ゴツさ”。
サンウルブズSH木村貴大の挑戦。
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byNobuhiko Otomo
posted2020/03/05 20:00
テスト生としてサンウルブズに加入し、スコッド入りを果たした木村貴大。国外開催に変更された遠征に追加招集された。
“世界への登竜門”での挑戦。
マイター10とは、スーパーラグビーのひとつ下に位置する、NZの強豪地域代表チーム同士によるニュージーランドの国内大会だ。かつてはNPC(ナショナル・プロヴィンシャル選手権)、ITM杯などと呼ばれ、ほとんどのオールブラックス選手はここを経由して育っている。日本代表の田中史朗や堀江翔太もここを経てスーパーラグビー選手となり、ワールドカップで日本代表を躍進させた。
つまり世界への登竜門なのだ。
2019年、ニュージーランドに渡った木村は、ラグビー王国でもラグビー熱の高さで知られるワイカトの中心都市ハミルトンに腰を据え、地元のクラブ、ハミルトン・マリストでプレー。すでにクラブのシーズンが始まっていたこともあり、マイター10のワイカト代表スコッド入りはかなわなかったが、地元のコミュニティに積極的に参加。持ち前のバイタリティに加えて英語も含めたコミュニケーション力を身につけた。
南半球のシーズンが終わり、日本に一時帰国後、それが発揮された。
沢木コーチに「チャンスをください」
故郷の福岡に拠点を持ち、東福岡高時代の先輩や後輩が在籍するコカ・コーラや母校の筑波大で練習させてもらっていた11月のことだった。
2020年にラストシーズンを迎えるサンウルブズが、選手集めに苦戦しているという情報を聞き、すぐU20代表時代にお世話になった沢木敬介コーチに連絡。「チャンスをください」と頼み込み「じゃあ、練習生で来い」という返事をもらい、年明けから市原の合宿に乗り込んだ。
「もともとは、1月中にはNZへ戻って、マイター10のワイカト入りを目指すつもりだったんです。でも、その前にスーパーラグビーでプレーできるチャンスがあるんだったら、それをやらない理由はないですから」
合宿は「毎日楽しくてしかたなかった」という。周りの選手はニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、トンガ、ジョージア……という多国籍集団。
「ここはニュージーランド? それとも南ア? という感じでした。英語もちょっとだけしゃべれるから、いつも外国人選手とばかりしゃべっていた」