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流大とも田中史朗とも違う“ゴツさ”。
サンウルブズSH木村貴大の挑戦。 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byNobuhiko Otomo

posted2020/03/05 20:00

流大とも田中史朗とも違う“ゴツさ”。サンウルブズSH木村貴大の挑戦。<Number Web> photograph by Nobuhiko Otomo

テスト生としてサンウルブズに加入し、スコッド入りを果たした木村貴大。国外開催に変更された遠征に追加招集された。

HCも主将も感心するリーダーシップ。

 市原での生活は、毎日がトライアウトだった。「今日で帰っていいよ」といつ言われるか分からない。だから1分1秒も無駄にできない。グラウンド以外でも吸収できることは何でも吸収しよう。目の前の1日をすべて使い切ろう。そんな木村の姿勢は、おそらくはそういうチャレンジになれている外国人選手たちと響き合った。毎日の練習で誰よりもハードワークする木村の存在は、いつしかサンウルブズになくてはならないものになった。

 当初はトレーニングスコッドとしてチームに帯同していた木村だが、スーパーラグビー開幕直前にシーズンスコッドとして契約。晴れてプロラグビー選手となった。そしてチームでは「チームビルディングリーダー」を、PRヘンカス・ファン・ヴィックとともに拝命する。

 1月25日、プレシーズンマッチのチャレンジバーバリアンズ戦のあとで、大久保直弥HCは言った。

「木村はこのチームが集まったときから、NZでの経験もあって、積極的に外国人選手とも日本人選手ともコミュニケーションを取ってくれて、スタッフも選手も助けられています。いつも、自分をアピールしたいというハングリー精神を持っていて、その向上心がチームに活力を与えている。チームの文化を作っていく上で必要な選手です」

 共同主将の森谷圭介は「ウォームアップとか、コミュニケーション面、ミーティングなどでチームをまとめてくれています」と話した。

 ラグビーキャリア自体はエリートコースを歩んでいながら、サイズの条件もあって一度はレールを外れた。だが、その評価に屈せず、自ら違うチャレンジを選択。さらに安定を捨ててもっと大きな果実を求める。閉塞感があふれる現代だからなおさら、“キムタカ”の生き方は多くのファンの心を引きつけるのだ。

「チャレンジを多くの人に知ってほしい」

 そして、彼のもうひとつの魅力は、多くの人と自らつながろうという姿勢だ。

 木村は豊田自動織機を退社してNZに挑戦するにあたり、「夢へのチャレンジを応援してください」と、自らのチャレンジへのクラウドファンディングを立ち上げたのだ。

「実際は、3年間のサラリーマン生活である程度の貯金はためていたんですが、それ以上に、自分のチャレンジを多くの人に知ってほしいと思ったのが動機なんです」

 その姿勢は、サンウルブズの試合をライブでコメントをつけて配信するチャレンジにもつながっている。

 予定ではラストシーズン、あすの知れない戦いを続けるサンウルブズにとって、格好のキャラクターかもしれない。

 次の出番が来た暁には、ゴツいSHにぜひ注目してみてほしい。

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