マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
野球名門の中学生が大人になった日。
小さな子に野球を教える経験の意味。
posted2020/03/01 08:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
前の晩までは常磐沖の太平洋から冷たい風がビュービュー吹いていて、明日も寒いのかなと心配していたら、その朝は快晴、無風、陽の光いっぱいの、ありがたいお天気になってくれた。
福島は海沿いの、いわき市・南部スタジアム。
はるかに太平洋をのぞむ高台に、両翼100メートル、センター122メートルの広さで、一面フカフカの人工芝だ。
内野スタンド後ろのネットに今の倍ぐらい高さがあればプロの公式戦でもできそうな立派なグラウンドに、子どもたちの歓声がこだまする。
題して、「中学軟式野球のお兄ちゃんたちと遊ぼう!」。
主に小学校に上がる前の地元の子どもたちを野球場に招待して、中学球児たちといろんなことをして遊ぼうよ。
そして今日の思い出をきっかけに、何年かして再び「野球」の現場に戻ってきてくれる少年、少女がたくさんいたら嬉しいね。
そんな思いを抱いた、「いわき」の中学で野球部のお世話をしている先生たちが、この催しを企画した。
星稜と桐蔭学園、そしてクラブチーム。
ひと役買ったのが、星稜中学校(石川)と桐蔭学園中学校(神奈川)の野球部、そして地元の中学軟式クラブチーム・いわき松風クラブの指導者と選手たちだ。
2011年、東日本大震災の被害を受けたいわき市の中学校に、桐蔭学園中野球部が「なにかお役に立てることがあれば……」とアプローチしたのが縁の始まりで、以降毎年、練習試合は続けてきたそうだが、今回のような子どもたちを対象にした催しは初めてだという。