マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
野球名門の中学生が大人になった日。
小さな子に野球を教える経験の意味。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/03/01 08:00
甲子園を目指すのも素晴らしいが、「野球は楽しい」と思う子供たちの増加こそが日本の野球界を豊かにするのだ。
子どもに遊んでもらうための種目の数々。
広い広いグラウンドのファールエリアまで使って、10種類以上の「遊び」のスペースと道具が用意された。
今は、なんといろいろな遊び道具があることか……まず、そこに驚かされる。
高圧空気を下から吹き上げてゴムボールをフワフワ浮かせて、それをビニールバットで打つのが「エアーヒットマシン」というそうだ。
つまり、1人でティーバッティングができる機械で、もっと高性能なやつがすでに「硬式野球」にも導入されていると聞いて驚いた。
子どもたちに遊んでもらおうという催しだから、「野球」の種目も難しくない。
ホームベースのあたりから「置きティー」で子どもがボールを打って一塁に走る。内野でたくさんの子どもたちがそれを迎えうち、捕球したボールを「一塁」ではなく「ホーム」のキャッチャー役の中学生に投げて、打者走者が一塁を踏んだタイミングで、アウト! セーフ!
飛んできた方向に投げ返すぶん「野球」より難度が下がるから、けっこうゲームとして成立して、子どもたちは大喜びだ。
小学生たちの「なわとび」がうまい。
遊びは「野球系」だけじゃない。
テニス、ゴルフ、バドミントンを「遊び化」したゲームもあれば、なわとび、フラフープ…そのままの遊び方のできるスペースもあって、子どもたちは何から始めていいのか、パニックになるほどのバリエーションだ。
それぞれの「種目」にいちいち中学球児のお兄さんたちや、スタッフとして協力されている地元の小・中学校の先生たちが付き添って、いっしょに遊ぶ。
「なわとび」なんか、子どもたちが上手くて舌を巻く。
二重跳びを10回以上続けて平気な顔をしている小学校3年生。なわをたすきに回しながら跳ぶアクロバチックな技を披露してくれた4年生。中学球児が、負けじと勝負を挑むがかなわない。体がおとなになるほど、こういうことが出来なくなる。
得意そうな子どもたち。中学生のお兄さんたちに“勝利”したのだ。
この子どもたちにとって、「スポーツ」は今日から、かけがえのない肉親になったはずだ。