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ドリブラーの鬼門セリエAで大暴れ。
メッシ以上の突破数、ボガの異才。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2020/02/21 19:00

ドリブラーの鬼門セリエAで大暴れ。メッシ以上の突破数、ボガの異才。<Number Web> photograph by Getty Images

サッスオーロというプロビンチアで存在感を放つボガ。そのドリブルでステップアップを果たせるか。

メッシ、ネイマール以上の挑戦数。

 ボガは、守備の国でドリブルの極意をつかんだ。

「守備ラインが高めの強豪より、引いて守る地方クラブ相手の方が難しい。敵陣の一番深いゾーンでどうアタックするか、デゼルビ監督の指導が役に立っている。ゴールもアシストももっと決めたい。もっと、もっとだ」

 今季リーグ後半戦が始まった1月下旬までに、ボガはドリブルを137回仕掛けて、82回成功させている。

 Opta計測によるチャレンジ回数と成功数で、ボガはセリエAで断トツの数字を誇るだけでなく、リオネル・メッシ(バルセロナ)やネイマール(パリSG)、ジェイドン・サンチョ(ドルトムント)といった、スペイン、フランス、ドイツのリーグが誇る稀代のテクニシャンたちをも上回った。

 現代サッカーは組織で守って組織で攻めるのが常識だから、個人技を許す余地はだんだん狭まっている。フィールドプレーヤー10人のうち1人でも決まり事から外れれば、即、全体の守備フェーズでの数的不利に繋がる。セオリーを崩す個人技を推奨する指導者がイタリアに少なくなるのは道理だ。

サッスオーロは異端のドリブル重視。

 しかし、サッスオーロの指揮官ロベルト・デゼルビは違う。

 慣習におもねることを嫌う彼が率いるサッスオーロは、セリエAきってのドリブル重視型チームとして異彩を放つ。チームの1試合平均チャレンジ数(22.8回)と平均成功数(13回)はともにリーグ最多だ。

 選手たちの兄貴然とした若手監督デゼルビは、愛弟子ボガを評して「あいつは才能の塊だ」と目を細めながら、小言も忘れない。

「今季に入って『もっと得点に絡むプレーがしたい』と言ってきた。若いんだからその意気や良し、だ。だが、自分の好きなことだけやって後は知らない、では困る。(ドリブルを)チームとしての成果に繋げなければ意味がないんだ。(2月までに奪った7得点も)あいつ本来のポテンシャルを考えれば、倍は欲しい」

 ぼやきと叱咤は期待の表れだ。リーグ最高のドリブラーを抱える自分を、国中の同業者たちが本当は羨んでいることを、デゼルビは知っている。

【次ページ】 13年前、松井大輔と話したこと。

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ジェレミー・ボガ
サッスオーロ

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