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ドリブラーの鬼門セリエAで大暴れ。
メッシ以上の突破数、ボガの異才。
posted2020/02/21 19:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
ドリブラーにとって、イタリアは鬼門だ。
守備第一のお国柄だけに、1対1を制したときのアドバンテージより、ボールを取られて守勢に立ったときのリスク管理が優先される。自陣でドリブルなど好きにさせてたまるかという思いは、イタリアの指導者や守備者の多くが共有する思いだ。
だが、ドリブラー包囲網が厳しければ厳しいほど、それを突破したときのインパクトは大きい。
今シーズン、セリエAのナンバーワン・ドリブラーといえばサッスオーロの左ウイング、ジェレミー・ボガだ。
チェルシーから加入して2年目、23歳のコートジボワール代表が右足に吸いついたボールを離すのは、相手のゴールネットを揺らすときだ。
3人に囲まれた昨秋の第8節インテル戦では、マーカーを振り切って名手サミール・ハンダノビッチの守るゴールを破った。王者ユベントスと引き分けた第14節では、痛快なチップショットで鉄人ジャンルイジ・ブッフォンに尻餅をつかせた。
トリノ、ローマ相手のボガ劇場。
圧巻だったのは、2-1で勝った1月中旬のトリノとのホームゲームだ。
前半に味方のオウンゴールで先制されたが、61分に左サイドでボールをもったボガは、躊躇なく正面にいたトリノMFトマス・リンコンの股を抜き、3ステップ目に30m超のミドルシュートを突き刺した。豪快な同点弾の後は、再び左サイドでマーカーを置き去りにして、FWドメニコ・ベラルディの逆転ゴールを鮮やかにアシストした。
これで一旦打ち止めかと思いきや、第22節のローマ戦でも"ボガ劇場"は続いた。試合終盤の73分に自らの不注意からPKを献上。汚名返上とばかりに、そのわずか1分後に相手ペナルティーエリアへするすると侵入すると、マーカーを小刻みなステップでかわして、ゴール右隅に駄目押しゴール。4-2の乱打戦を制した。
ボガは174cmの小兵だが、四肢も体幹も厚みがある。両側から挟まれても中央を突っ切るボディバランスと磁石を備えたかのような両足でのボールコントロールを武器に、イタリア中のDFたちのタイミングを読む。