セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
ドリブラーの鬼門セリエAで大暴れ。
メッシ以上の突破数、ボガの異才。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/02/21 19:00
サッスオーロというプロビンチアで存在感を放つボガ。そのドリブルでステップアップを果たせるか。
13年前、松井大輔と話したこと。
13年前、オシムから岡田武史に日本代表監督が代わった頃、フランスのルマンにいたMF松井大輔(現横浜FC)にインタビューする機会があった。
カフェオレのカップを片手に「本当は焼酎がいいなあ」と笑いながら、松井はざっくばらんに当時のチーム状況やプレーに関する考えを話してくれた。日本有数のドリブラーだった彼は当時、腰痛に苦しみながら奮闘していた。怪我の怖さを語りながら「痛くても、俺は試合になったら絶対何か仕掛けてやりたいんです」と眼光を鋭くした。
松井のようなドリブラーをイタリアで見てみたいと思い、セリエAでプレーする気はないですか、と尋ねたら、彼は茶目っ気たっぷりに「いや~ないっすね」と首を横に振った。
ドリブルの際の体の使い方を教わりながら、すっと声のトーンを落として言った言葉をよく覚えている。
「肝はヒザっすね。膝を柔らかく使えれば、抜ける」
日本人離れしたドリブルスキルの持ち主は、膝こそ生命線なのだと強調した。
そういえば、ボガの膝も揺れていた。
そういえば、ローマ戦でマーカーをかわしたボガの左右の膝もしなやかに揺れていた。
インテルもユーベもボガにしてやられた。するすると、気がついたら、流れるようにシュートモーションに入られていた。
鬼門だからこそ本物が育まれる。
ボガは、ドリブラー不遇の地イタリアで「ウノ・コントロ・ウノ(1対1)」の真髄をつかんだ。彼はきっと、来夏の移籍市場を賑わす目玉の1人になるだろう。