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香川真司らが頼りにする日本人医師。
怪我の治療方針を決めるのは誰か?
posted2020/02/21 11:30
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
JFA/AFLO
手術をしても、治療をしても、医師の仕事は終わらない。
池田浩教授はそう考えている。順天堂大学の理学療法学科で膝を専門とした整形外科医を務める池田は、これまで数多くのアスリートの治療にかかわってきた。
「仮に手術をしてきちんと成功させたとしても、手術そのものは100点満点のうち、50点でしかないんですよ。あとの50点はリハビリにかかっています。怪我をした選手が復帰するまでのプロセスの全てを医師だけでやっているわけではなく、リハビリにかかわるトレーナーのみなさんの力がすごく大事」
そんな風に考える池田だからこそ、「ある問題」に心を痛めるようになった――。
その問題に触れるまえに、池田とサッカー界との接点を振り返らないといけない。
池田は2010年の南アフリカW杯のあとから、2014年の10月まで日本代表のチームドクターを務めていた。その後はJFA医学委員会の委員長となり現場は離れたものの、再び請われる形で2017年11月のベルギー遠征から'18年のロシアW杯まで日本代表チームに同行。そしてロシア杯を終えて、再び現場を“卒業”した。
とはいえ現場から離れても、池田と選手の関係はかわらない。今なお彼を慕う日本人サッカー選手は多い。
海外でプレーする選手が激増。
池田とサッカー界との関係が密になっていった2010年の南アフリカW杯頃から、日本サッカー界には大きな変化があった。
海外、特にヨーロッパでプレーする選手の数が一気に増えたのだ。
南アフリカ大会の開幕時点で、海外のチームに所属する日本代表選手は4人だけだった。それが2014年ブラジルW杯で23人中12人に、2018年ロシアW杯では15人に増え、昨年9月にパラグアイとミャンマーと対戦した際の招集メンバーには過去最多の19人が含まれていた。
また昨年のアジアカップ決勝戦は、スタメン全員が海外組となった初めての試合となった。
もちろん、海外へ移籍するのは日本代表を経験した選手だけではない。かつてはJリーグで活躍して日本代表に選ばれ、そのあとに海外への扉が開くというのが一般的だった。しかし現在は、代表経験がない選手も多く海外に移籍するようになり、ヨーロッパでの活躍が認められて日本代表に選ばれるケースが増えつつある。