才色健美な挑戦者たちBACK NUMBER
選手から監督へ。3シーズン目を迎える
井口資仁が目指す監督像。
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph byKiichi Matsumoto
posted2020/02/12 11:30
喜怒哀楽を出さないことも重要。
そもそもプロには自分が敵わないと思う選手がたくさんいる。松井秀喜の長打力やイチローさんのバットコントロールには、どうやったって勝てない。じゃあ、どうしたら彼らを抜くことができるか、自分が秀でているものをどうやってさらに引き出すかということを、僕は常々考えていましたし、それが結果につながったと思っています。
ただ、思い返してみると、こうしたらもっとできたんじゃないか、今の考え方を持ったまま1年目の自分に戻れたら、もっと成績を残せたのにって、つい想像しちゃうんですよね(笑)。だから僕が選手時代に培ったこと、自分にはできなかったことを選手たちには伝えていきたい。
試合では極力、喜怒哀楽を出さないというのも心がけていることです。相手チームに状況を悟られたくないというのもありますが、今は表情に出すと萎縮してしまう選手もいます。そうすると相手チームではなく、首脳陣の顔を見てプレーしてしまう危険がある。サングラスをかけたりして、なるべく表情に出さないようにしています。
プロに入るときにスカウトの方から「実るほど頭を垂れる稲穂かな」ということわざを教えてもらったんです。プロ野球選手は注目されることも多いですが、決して偉いわけではない。礼儀正しく頭を垂れて、ファンの方に応援してもらうことに感謝の気持ちを持ってプレーをする。この思いは今でも変わらず持ち続けていますし、ファンの方々に喜んでもらうためには、やっぱり優勝をしなくてはいけない。そのために何が必要なのかを、今は常に考えています。
井口 資仁Tadahito Iguchi
1974年12月4日、東京都生まれ。小学生から野球を始め、國學院久我山高、青山学院大に進学。大学4年時にアトランタ五輪に出場し銀メダルを獲得。福岡ダイエーホークスを逆指名しドラフト1位で入団。ベストナイン3回、ゴールデングラブ賞3回などに輝き、'05年から活躍の舞台をMLBに移し、ホワイトソックスとフィリーズ時代にワールドシリーズ優勝を2度経験。'09年に日本球界に復帰し、千葉ロッテマリーンズに入団。'10年には日本シリーズ制覇。'17年に現役を引退し、'18年より監督。
ナビゲーターの俳優・田辺誠一さんがアスリートの「美学」を10の質問で紐解き、そこから浮かび上がる“人生のヒント”と皆さんの「あした」をつなぎます。スポーツ総合誌「Number」も企画協力。
第94回:井口資仁(野球)
2月14日(金) 22:00~22:24
プロ野球・千葉ロッテマリーンズの井口資仁監督は大学時代にアトランタ五輪で銀メダルを獲得。ダイエー(現・ソフトバンク)で日本一、MLBでは世界一を経験しました。日本球界に復帰し、ロッテで日米通算2000本安打を達成。'17年に引退し直後に監督に就任。チーム論・リーダーシップ論、勝つために心がけている彼の美学に迫ります。
第95回:岡部紗季子(体操)
2月21日(金) 22:00~22:24
元体操選手の岡部紗季子さんは4歳で体操を始め、ジュニアで日本一、日本代表として様々な国際大会に出場しました。選手としてピークを迎えた後に襲ったスランプの乗り越え方、現役を引退して後進を指導する時に意識していること、新たに挑戦している夢など、その美学を紐解きます。