濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
多様なルールの格闘技“実験リーグ”。
新生ZSTは「斜め上」の団体へ!
posted2020/02/04 11:30
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
「修斗、パンクラス、DEEPと比べたら、ウチは“ビリ”なので。それは選手たちにも言ってあります」
言葉の主は勝村周一朗。「リングス」を前身とし、2002年に旗揚げした総合格闘技イベント、「ZST(ゼスト)」の新プロデューサーである。
ZSTで活躍したほか修斗で世界王座を獲得、ジム会長・指導者としても定評がある勝村はZST実行委員から昨年10月にプロデューサーに就任。最初の記者会見で掲げたテーマの一つが「温故知新」だった。
現在は一般的なMMAをベースとする「ZSTルール」の試合が中心のZSTだが、かつては独自路線で注目された。初期の基本ルールはグラウンドでの顔面パンチが禁止。“固めて殴る”よりも“動いて極める”ことを重視したものだ。このルールで磨かれ、日本有数のフィニッシャーに成長したのが所英男である。
旧リングスルールでプロレスラー登場!
勝村の言う「温故知新」とは、独自色を打ち出すことで活性化を狙うという意味だろう。新体制初のナンバーシリーズ(本戦イベント)となる1月26日の『ZST.67』新宿FACE大会では、ZSTルールに加えKOKルール(グラウンドパンチなし)、GTルール(グラップリング)、GTタッグマッチ、さらにRXルール(掌底、ロープエスケープありの旧リングスルール)の試合も組まれた。
RXルールで伊藤健一と対戦したのはZST初参戦の飯塚優。「HEAT-UP」という団体に所属するプロレスラーだ。23歳と若いが憧れの選手はヴォルク・ハン。ロシアの格闘技サンボを学び“格闘スタイル”のプロレスを得意とする。
飯塚がリングスルールで試合をするというプランは、ここ数年プロレスラーとして活躍、ベルトを巻いたこともある勝村の発想と人脈あってこそだ。格闘技界での飯塚の知名度は高くないが、自由な発想で人材発掘、育成につなげようというわけである。飯塚の参戦からZSTを知ったプロレスファンもいるだろう。