濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
多様なルールの格闘技“実験リーグ”。
新生ZSTは「斜め上」の団体へ!
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2020/02/04 11:30
旧リングスルール、素手&レガース着用で対戦した伊藤健一(右)と飯塚優。勝った伊藤は「プロレスラーがこの場に出てきてくれたのは超リスペクトです」。
複数のルールで運用する大会の成否。
格闘技イベントの客席には選手個人からチケットを買った“応援団”も多く、お目当ての試合が終わると会場を後にすることが珍しくない。そんな中で勝村はこう考えている。
「プロレスでは最初から最後までお客さんが集中して見てくれるんですよ。集中力が途切れない試合数だというのもあるんですが、そのことで生まれる熱気もあって。ZSTも“パッケージ”にしてお客さんを飽きさせないようにしたいですね」
今回、複数のルールでマッチメイクを構成したのも“プロレス的発想”とも言える。
プロレスの興行にはタッグマッチもあればバトルロイヤルもあって当然だ。「無理していろんなルールを入れてみた」という今大会の試みは成功だったと言えるのではないか。
格闘技イベントが陥りがちな「“勝った負けた”が淡々と続く」状況を避けることができたのだ。
「ZSTは特殊な団体でいい」
大会開始直前には、全選手を集めてのミーティングを実施した。プロ意識と団体としての一体感を重視してのことだ。大会の進行、注意事項の伝達に加え、勝村のこんな言葉が印象に残った。
「試合が終わった選手が客席に来て応援団に挨拶するようなことがありますけど、ウチではやめましょう。プロらしい振る舞いを心がけてください」
「負けた選手でも、次また試合がしたいと思ったら遠慮なく僕に言いにきてもらえたら。いい試合をする選手にはどんどんチャンスを作ります」
「団体として規模は小さくても中身では負けない。そんな気持ちでやりましょう」
ZST参戦選手の合同練習会も開いた。技術向上だけでなく選手の士気を上げるという目的があってのことだ。今後はセミナーも開催したいという。その結果、本来ライバルであるべき選手たちが仲良くなってしまっても、それはそれでいいと勝村。練習と試合で気持ちを切り替えるのもまたプロ意識だからだ。曰く「ZSTは普通とは違う、特殊な団体でいいと思ってます」。