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サッカー王国静岡、苦悩の20年史。
長谷部誠や内田篤人を輩出の一方で。
text by
原山裕平Yuhei Harayama
photograph byAFLO
posted2020/01/23 08:00
藤枝東時代の長谷部誠。ちなみに10番を背負ったのは成岡翔という豪華な陣容だった。
2010年代に入ってから低迷期に。
しかし、2010年代に入ると、静岡県勢は選手権で勝つことができなくなった。とりわけ2015年度からは4年連続で初戦敗退という屈辱にまみれ、サッカー王国の栄華は完全に過去のものとなった。
後にプロで活躍する選手もなかなか生まれなくなっている。もちろんJクラブの下部組織出身者が大半を占めるようになった時代の流れもある。近年の最高傑作である大島僚太(静岡学園)や、この度、清水エスパルスからシント・トロイデンに移籍した松原后(浜松開誠館)も含めタレントは輩出されているものの、その数が減少傾向にあるのは否定できない事実である。
王国の衰退は、高校だけの話ではない。ジュビロ磐田は2度目のJ2降格の憂き目にあい、清水エスパルスも低迷が続いている。そうしたなかで今年度、静岡学園が24年ぶりに選手権で優勝を果たしたのは、静岡県のサッカー界にとって久しぶりの明るいニュースとなった。
「勝利至上主義」が低迷に?
静岡の高校サッカーの低迷について、静岡学園の川口修監督は「勝利至上主義」を原因に挙げている。結果にこだわるあまり個の育成が疎かになっているのではないかと、指揮官は主張したのだ。
その流れに抗うかのように、静岡学園はあくまで個人技を重視する伝統のスタイルで全国の頂点に立った。信念を貫き、結果を手に入れた静岡学園の戦いぶりは、静岡県の高校サッカー界に「王国復権」のヒントと希望を与えるものとなったはずだ。