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ローマ、米大富豪による買収迫る?
それでもロマニスタには不安なし。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2020/01/21 11:40

ローマ、米大富豪による買収迫る?それでもロマニスタには不安なし。<Number Web> photograph by Getty Images

米富豪による買収が迫るローマ。クラブが売りに出されても、それを悲観的に見るロマニスタはいないようだ。

ヤンキーたちの上陸。

 現在、イタリアには北米在住のオーナーを頂くクラブが、ローマを含めて5つもある。

『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙は、今回の売却交渉報道に際し、「カルチョと投資」という別記事に“ヤンキーたちの上陸”と見出しを打った。

 昨年夏、名門フィオレンティーナがニューヨークのメディア王ロッコ・コミッソにより1億7000万ユーロで買収されたのは記憶に新しい。

 ミランの実質的な所有権は、米国ファンド「エリオット・マネジメント」とその筆頭経営者のポール・シンガーが握っている。中国人実業家がミラノの名門を買収するのに借り入れた3億ユーロを返せず、借金のカタとして取り上げたのだ。

 モントリオールを拠点に酪農や乳業などで財を成したジョーイ・サプートは、'14年からボローニャFCの会長を務めている。

 サプートに会長の座を譲ったのはNY生まれの弁護士ジョー・タコピーナで、彼は5年前の秋からベネツィア(現セリエB)の会長の座に収まっている。'11年春のローマ買収にも深く関わり、ディベネデット会長の下で副会長も務めていた。

都市としてのブランドも考慮?

 ローマ、フィオレンティーナ、ミラン、ボローニャ、ベネツィア。

 この5クラブに共通するのは、世界的観光資源と知名度を持つ都市を本拠地に持つ点だ。日本人には馴染みが薄いかもしれないボローニャも、由緒ある学術都市として、欧州での認知度は高い。

 つまり、アメリカ人の富豪たちは、サッカークラブだけでなく“都市としてのブランド”も買っているのだといえる。

 観光や映画業界に携わる者にとってみれば、ローマという都市が持つ世界最強クラスのブランド力は、喉から手が出るほど魅力的だ。'17年の政府統計によると、ローマを訪れた観光客は同国内トップの2700万人にも上った。

 今はソーシャルメディアとLCCの時代だ。昨年11月、ローマを視察したフリードキンも「ワンダフル!」を連発している。

“永遠の都”も、またその名を冠するセリエAクラブもオンリーワンの存在だ。

【次ページ】 アメリカ人は金をドブに捨てない。

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