セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
ローマ、米大富豪による買収迫る?
それでもロマニスタには不安なし。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/01/21 11:40
米富豪による買収が迫るローマ。クラブが売りに出されても、それを悲観的に見るロマニスタはいないようだ。
アメリカ人は金をドブに捨てない。
これは希望的観測だが、2023年を目処にローマが自前のスタジアムを稼動できれば、今、買収に965億円かかっても必ず資産価値と売り値は上がる。いや、やり手の投資家ならば上がるように仕向ける。パロッタ現会長が、この8年間でそうしてきたように。
それに「7億9000万ユーロ」と算定された評価額は、ローマと関連会社が持つ総資産の時価であって、実際に買収を行う際はクラブが現在抱える2億7000万ユーロ分の負債額は差し引かれるはず。フリードキンが1000億円近い額を支払うことはないだろう、というのが現地の見方だ。経営権を握るだけが目的であれば、パロッタが持つ86.5%の株をすべて買い取る必要もない。
テキサスの自動車王をよく知る映画プロデューサーは、伊紙にこう語っている。
「フリードキンにとって、ローマは今が底値かも。クラブを買っても(年単位の転売)ビジネスとして確実に儲かる。アメリカ人は金をドブに捨てるような真似はしないよ」
蹴り始めの練習に2600人!
会長が外国人だろうが、スポンサーが国際化しようが、クラブの実体を形づくるのは、選手たちのプレーであり、オフィスや練習場で働くスタッフであり、地元ファンの熱だ。パトロンが変わっても、“ローマは地元に根ざしたクラブ”という根本は揺るがない。
よく晴れた今年の元日、ローマは蹴り初めの公開練習を実施した。練習場には2600人が詰めかけ、チームの紅白戦には冬休みの子供たちが拍手と歓声を送っていた。
試合終了のホイッスルを吹いた後、夕陽に照らされたフォンセカ監督はマイクを握り、ポルトガル訛りながら一句一句、丁寧に訴えた。
「ユベントスやインテルとスクデットを争うのであれば、あらゆるミスを少なくしていく努力が必要で、これはメンタルの問題です。クラブにとって紀元ゼロ年とでもいうべき今シーズン、我々はまさにチームのメンタルを変えようと頑張っています。できるだけ早く、タイトル争いがしたいのです。皆さんと我々にとって素晴らしい1年になりますように! フォルツァ・ローマ!」