球体とリズムBACK NUMBER
「日本の早期敗退は驚きでした?」
カタール監督に質問、率直な答え。
posted2020/01/20 20:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
JFA/AFLO
同じ引き分け、同じ敗退でも、結果の重みはまるで違う。
AFC U-23選手権のグループステージ最終戦、日本とカタールは1-1のドローに終わり、両者はともに大会から姿を消すことになった。最下位の日本はそれでも開催国として東京五輪に出場できる。だが惜しくもグループ3位に終わったカタールは、1992年のバルセロナ五輪以来となる3度目の本戦出場を叶えられなかった。
2年後にW杯を開催するカタールは、今やフットボールにもっとも多額の投資をする国家のひとつだ。東京行きは悲願だったはず。
フットボール界最大のパトロンの代表チームには、日本戦であからさまに有利な笛が吹かれたりもしたが、たびたびのシュートミスもあり、必要な勝ち点3を獲得できなかった。終了後のピッチには、倒れ込んでしばらく動けなくなったカタールの選手がたくさんいた。
とてつもない重圧を感じながら仕事をしているはずのスペイン人指揮官、フェリックス・サンチェス監督はしかし、試合後の会見に堂々と現れた。そして大きな声で率直に明確な言葉を発した──自分の考えをはっきり述べたり、説明責任をしっかり果たしたりするのは、国の代表チームやトップレベルのクラブを率いる人物に求められる大事な役割のひとつである。
アジア王者に導いた監督でも容赦なし。
「今回は重要な大会の出場権を逃してしまったけれど、若い選手たちには良い経験になった。それを活かして、チームも個人も成長していくことを望んでいる。次の新たな挑戦への準備はできている」
1年前にカタールA代表を率いて、アジアカップ初制覇に導いた現在44歳の指導者がそう試合を振り返ると、カタールの髭面の記者が牙を剥く。
「あなたは日本を褒めたが、それよりもこちらの戦術が有効ではなかった」
「それは君の意見だ。私は意見を尊重するが、それは質問ではない」とフェリックス監督が断固として返す。
「その通り、私の意見だ」と記者も引き下がらない。「しかしなぜカタールはチャンスを生かせなかったのだ?」
「いいかい、もし君がちゃんと試合を見ていたのなら、わかるはずだ。私は選手たちに、後半はもっと攻撃的にいくと指示した。そして後半には何度もチャンスを作った。しかし我々に立ちはだかったのは、日本代表チームだ」