酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
ワンポイント廃止は時短にならず。
見習うべき高校野球のスピード感。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/01/15 11:40
過密日程や酷暑下でのプレーなど問題は多いが、きびきびとした試合進行は高校野球の大いなる魅力だ。
試合を端折っている印象はない。
主催者は甲子園での応援団の動きも管理している。
試合の後半になると、次の試合の応援団がアルプススタンドの端っこに陣取り、試合終了とともにあっという間に交代する。移動をスムーズにするために、高校野球に限っては客席の一部を取り払うことまでしている。
特に夏の大会では酷暑の中、2時間で試合を終わらせることは選手の健康面を考えても重要だろう。
筆者は毎年、春夏の大会で、4試合の日を選んで丸1日観戦する。それを見ているといつも「やればできるんだ」と思う。それでいて、試合を端折っているような印象は全く受けない。
つまり日本の高校野球を手本にすれば――こまごまとしたルール改定をしなくても時短は十分に可能だと思う。
「間のスポーツ」であるからこそ。
NPBでも、攻守交代時には両軍の選手が誰もいない時間ができる。特に終盤以降、選手はゆっくりとグラウンドに出てくる。これは疲労を考えてのことだろうが、だらだらと動くよりもきびきびした方が、疲れは少ないのではないかとも思う。
打者が打席を外すのも“クセ”になっているだけで、見直すことは可能だろう。当然、投手の20秒ルールは厳格に適用すべきだ。
投手交代も、ワンサイドゲームで意味の薄い継投などは時短の意識ひとつで減らすことができるのではないか。
野球は「間のスポーツ」だといわれる。確かに投手と打者の「間」や、打者の動きを見て野手が守備位置を変える「間合い」などは野球の味わいだろうが、レベルが高い試合になればなるほど「間」の時間が増えるのは、そこまで好きではない人から見たら「間が抜けた」ように映る可能性がある。
日米問わず「試合の時短」は、喫緊の課題だ。だとすれば、おかしなルール変更をこれ以上増やさないためにも、現場の選手、指導者が時短を意識すべきではないか。
さしあたり1試合平均時間が3時間を切って、2時間45分に近づくように機構、リーグで努力目標を設定してはどうか。