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悲願のトップリーグ初勝利を目指して。
三菱重工ダイナボアーズと土佐誠主将の挑戦。 

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雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byHideki Sugiyama

posted2020/01/10 11:00

悲願のトップリーグ初勝利を目指して。三菱重工ダイナボアーズと土佐誠主将の挑戦。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

土佐主将の下、チームは12年ぶりのトップリーグに挑む。

引退がよぎる中で支えになった同僚。

 引退が頭をよぎっていた土佐の復活を後押ししてくれたのは、2013年にNECに加入した元ウェールズ代表ガレス・デレヴである。ポジションは同じNo.8でロッカーは隣同士。デレヴはスーパーラグビーのレベルズで、開頭手術で脳腫瘍から復帰した元オーストラリア代表ジュリアン・ハクスリーとチームメイトだった。

「だから土佐もできるんじゃないか?」

 デレヴの言葉に背中を押され、ハクスリーのプレー動画に勇気づけられ、直接連絡を取って助言をもらうなど、初めて発作が出てから約2年後、土佐はついに手術に踏み切った。

 さらに1年以上のリハビリを経て復帰を果たすと、自分にとってのラグビーの位置づけも自然と変わっていた。

「昔は好きなことをやって勝ってお酒が飲めればよかったけど、今はだんだん終わりが見えてきましたからね。自分がラグビーをやっている意味も考える年代になってきた」

 現在はてんかんの啓発イベントに積極的に参加しているのも「僕と同じ境遇にある人に、これだけ頑張れることを知ってもらいたい」という使命感からだという。

6年連続で入替戦敗退の歴史。

 NECに入団してすぐにオックスフォード大に留学した土佐は、NEC退団後にも海外挑戦を選んだ。将来の指導者としての人生も考えた上で、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州のイーストウッドに所属し、クラブラグビー選手権「シュートシールド」に参戦。そして日本に戻り、2017年8月にダイナボアーズに加入した。

 運命に翻弄された土佐の歩みは、ダイナボアーズの悲劇的な定めとどこか通じる部分もある。チームが挑んできた入替戦の歴史を見ると、そのことがよく分かる。

12-13年 ●21-24 vsNTTドコモレッドハリケーンズ
13-14年 ●17-22 vsコカ・コーラウエストレッドスパークス
14-15年 ●7-53 vs豊田自動織機シャトルズ
15-16年 ●3-17 vsNECグリーンロケッツ
16-17年 ●21-33 vs豊田自動織機シャトルズ
17–18年 △27-27 vsコカ・コーラレッドスパークス

 12-13年シーズンからいつも最後の一歩が届かず、17-18年に至っては残り1分で同点に追いつかれ、規定により昇格を逃した。

 6年連続で入替戦敗退。ここまで続くと実力の問題ではない。運、不運の問題でもない。もはや運命。そんな風に悲観してしまったとしてもおかしくはない。

「あれだけ負けが続いちゃうと、自信というのもなかなかつかない。引き分けのときは本当にみんながっかりしていました」

 土佐はドローに終わったレッドスパークス戦の約4カ月前にチームに加入した。だが、負の歴史を覆すことができなかった。

【次ページ】 主将として12シーズンぶりの昇格。

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