球体とリズムBACK NUMBER
ファンダイクほど完璧ではないが、
南野拓実のリバプール初陣は上々だ。
posted2020/01/07 11:40
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
あの34分のクロスを確実に頭で捉えていたら、ビルヒル・ファンダイクと同じ第一歩を踏み出せていたはずだ。
2020年1月5日、リバプールの本拠地アンフィールドで行われたFAカップ3回戦のエバートン戦で、南野拓実は新天地にデビューした。ちょうど2年前の同じ日、同じ場所、同じ舞台、同じダービーで、サウサンプトンから入団したファンダイクもリバプールで初の実戦の機会を得た。
そしてこの長身DFは終盤にCKからヘディングで決勝点を奪い、さっそくサポーターに歓喜をもたらしている。マージーサイド・ダービーの勝利には、特別な意味があるのだ。
だから今回の日本代表アタッカーの初陣を、今や世界一と評されるオランダ代表CBのデビュー戦になぞらえる向きもあった。同じ街の宿敵との一戦で最高のデビューを飾れば、看板の3トップの控えという立ち位置も早々に改められるかもしれない、と。
ほぼノーインパクトに終わったが。
しかしニュートラルに言って、南野はデビュー戦でほぼノーインパクトに終わった。唯一の見せ場は冒頭の前半なかばに訪れ、左サイドのディボク・オリジからのクロスに頭を合わせようとしたが、うまくミートできなかった。あれを決めていれば、2年前のファンダイクと同じようにすぐさまファンの心を掴み、早くもチーム内で重要な居場所を得ていたかもしれない。
むろん、これは物事に繋がりを見出そうとするジャーナリスティックな見方に過ぎない。偶然の一致が最良の帰結とならないことの方が多いだろう。それに状況も異なる。
2年前の一戦では、リバプールも相手と同様に、その時点のフルメンバーを先発に並べた。
しかし今回、ユルゲン・クロップ監督はタイトな日程と複数の負傷者を考慮して、3人のティーンエイジャーと2人のデビュータレントを含む、Bチームと呼べる編成で臨んだ。南野は4-1-2-3システムの頂点を任され、レギュラーのロベルト・フィルミーノのような働きが期待された。