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バレー福澤達哉、二度目の海外挑戦。
自身の野望と覚悟を「言葉にする力」。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byTakahisa Hirano
posted2019/12/24 11:00
2015年のブラジルに続き、自身ニ度目の海外生活。妻は「今しかできないことだから」と送り出してくれたという。
33歳、挑戦の裏にあった覚悟。
二度目の海外挑戦。柳田や石川のように、プロとして戦う選手とは異なることもある。
フランスリーグで戦う今も、福澤の所属はパナソニック。単なるスポンサーではなく、入社当時から変わらぬ所属部署に在籍する、いわゆるサラリーマン選手。そしてそれは、福澤自身が望んだ選択でもある。
一見すれば、会社という安定したバックボーンがある中で海外挑戦ができるとは、何と恵まれた立場か。そう捉える人もきっと多いはずだ。
しかし実際福澤にとっても、リオ五輪を翌年に控えた時点でのブラジル挑戦とは異なる。33歳の今、「自分」より「将来」を見据えれば、有望な若手が多くいるチームと会社に籍を残しながら海を渡ることができるのか。おそらく難しいだろう、在籍できても給料は受け取れないかもしれない、と覚悟していた。
とはいえ、家族もいる。妻は「今しかできないことなのだからチャレンジすればいい」と送り出してくれたが、まだ幼い四人の娘を養わなければならない。
バレーボール選手としての挑戦も諦めず、なおかつ会社員として、今の自分が選手として海外に渡ることで会社に何をもたらすことができるか。所属部署やチームに向け、自らの思いと意志を伝えるプレゼンテーションを繰り返し、2年を費やした。
ただ「行きたい」ではなく。
「チャレンジするな、という会社はないと思うんです。でも、手放しでは誰もサポートしてくれない。ただ“行きたい”ではなく、どれだけ具体的に“なぜ海外へ行きたいか”と伝えられるか。もちろんハードルは高いですよ。でもそのハードルを1つひとつ越えていくだけの覚悟がないと会社には、簡単に見透かされます。
だから、若い選手にもそこは理解してほしいんです。『福澤さんがこういう形で行ったから僕も行かせて下さい』というのは、何の理由にもならない。
なぜ自分を行かせてほしいのか。自分が今行くことでどんなメリットがあるのか、それを自分の言葉で説かないとダメ。バレーボール選手としてはもちろん、1人の企業人としても、いかにセルフマネジメントできるか。それはバレーボールだけでなく、企業スポーツ全体にも言えることだと思います」