第96回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
連覇を狙う“一強”東海大学に死角なし。
青山学院大学の鍵は4年生の奮起にあり。
posted2019/12/27 11:00
text by
箱根駅伝2020取材チームhakone ekiden 2020
photograph by
Nanae Suzuki
東海大学
第95回箱根駅伝(前回大会):総合優勝
7年連続、47回目
課題のエース区間にも自信は十分。
覚醒した3年生は“黄金世代”を超えるか。
文=小堀隆司
将棋でいえば、飛車や金に当たるだろうか。
12月10日に行われた記者発表会見で、第96回箱根駅伝にエントリーする各校16名の選手が発表されたが、東海大学は“黄金世代”と呼ばれる4年生の中でもエース格の關颯人がメンバーから外れ、さらには3年連続で山下りの6区を走り、前回は区間2位の好走で「復路逆転」の下地を作った中島怜利の名前もなかった。
本来であれば緊急事態のはずだが、両角速駅伝監督の表情に焦りはない。むしろ淡々とした口調で、彼ら2人の落選理由を語った。
「關は走れる状態までは戻ってきたんですけど、それ以上に状態の良い選手がいた。中島はケガからなかなか復帰できなくて、本人が自信をなくしてしまいました。前回であれば2人ともエントリーには入れたと思いますが、今季は例年以上に層が厚い。ケガ明けの彼らを入れてまで落とす選手がいなかったということです」
エース級の2人を欠いたのは残念なことだったが、嬉しい誤算もあった。とりわけ新戦力が多く出て、選手層に厚みが出たことが、両角駅伝監督に心の余裕を作りだしているのだろう。
化けるべくして化けた名取燎太。
今季、歩が金に成るような活躍を見せたのが、3年生の名取燎太だ。
学生三大駅伝デビューとなる11月の全日本大学駅伝で、19.7kmと距離の最も長いアンカー区間を任され、57分46秒の好記録でチームを逆転優勝に導いた。8区の57分台は日本人ランナーとしては9人目。タイムも日本人歴代5位タイに相当する。走り終えた直後に話を聞くと、本人は「出来過ぎです」と謙遜していたが、大会MVPに選ばれたのも当然の快走だった。
この大会では、同級生の塩澤稀夕が3区で区間3位、西田壮志が4区で区間賞を獲るなど、3年生トリオがチームを牽引。前回の箱根駅伝5区で区間2位の力走を見せた西田は、走力の上積みを証明し、箱根駅伝本番でもキーマンのひとりになることが予想されている。
これまで黄金世代と呼ばれた4年生の陰に隠れ目立たなかった彼らだが、元々は全国高校駅伝(都大路)のエース区間1区で1位から3位をわけあった実力者たちだ。名門・佐久長聖高のエースで、都大路の1区区間賞を獲った名取は、化けるべくして化けた選手であるとも言える。その名取の復活を喜んでいるのは、他ならぬ両角駅伝監督かもしれない。