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連覇を狙う“一強”東海大学に死角なし。
青山学院大学の鍵は4年生の奮起にあり。 

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箱根駅伝2020取材チーム

箱根駅伝2020取材チームhakone ekiden 2020

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photograph byNanae Suzuki

posted2019/12/27 11:00

連覇を狙う“一強”東海大学に死角なし。青山学院大学の鍵は4年生の奮起にあり。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

歩き、長いジョグを繰り返し。

 1年、2年とケガをしがちでくすぶっていた名取に対し、両角駅伝監督は「再生工場」と名付けたプランを昨秋に提案。スピードを追い求めず、ひたすら歩いたり、長いジョグを繰り返すことで、地道に脚を鍛えた。

「今まで結果が出てこなかったので、監督の言うことをとにかく信頼してついていった」という名取は、およそ半年をかけてプランを完遂。夏合宿に入る頃には走る距離も延び、秋になるとその成果が徐々に出始めた。10月の札幌ハーフマラソンを62分44秒の好タイムで走り優勝すると、11月の全日本大学駅伝でついに本来の力が覚醒した。

 箱根駅伝本番に向けて、「自分が走れるとしたら復路かなと思っていましたけど、今回の結果を受けて2区を走りたい気持ちも出てきました」と名取はエース区間の出走も視野に入れる。今の実力であれば、他校のエースとも堂々と渡り合えるだろう。

 東海大はこれまで箱根駅伝の2区で比較的苦しんできた。2017年は關が走って区間13位、2018年は阪口竜平(4年)が走って区間7位、前回は湯澤舜(現SGH)が走って区間8位と、他校の脅威になるような走りは見せられていない。もしこのエース区間でライバル校にリードを奪うことができれば、箱根駅伝連覇の夢はグッと近づくだろう。

指揮官が見据える理想の展開。

 理想の展開を聞かれて、両角駅伝監督は独特の言い回しでこう応えた。

「6、7、8区の復路で勝負かな。うちはあえて主導権を握りたくない。全日本大学駅伝のような戦いをしたいです」

 往路に主力級を並べて、流れを掴もうとする駅伝が昨今の主流だが、昨季の初優勝メンバーが8人残り、新戦力(3年生トリオ以外にも1年の松崎咲人や2年の市村朋樹らが虎視眈々と出場の椅子を狙っている)も台頭してきた東海大は、層の厚さでじっくり攻めれば勝利が呼び込めるという算段だろう。關以外の4年生は好調を維持し、ケガで出遅れていた主将の館澤亨次も箱根駅伝には間に合う予定だというから、まさに隙がない陣容である。

 会見場ではライバル校である青山学院大学の原晋監督に、こんなカウンターパンチをくらわせるシーンも見られた。

「原監督は『やっぱり大作戦』を掲げられましたけど、終わってみたら『やっぱり東海大が強かった』と。そんな展開に持ち込みたいですね(笑)」

 エースの離脱にも、不安はなし。指揮官の目に、連覇の視界は良好なようだ。

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