第96回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
選手層の厚さで総合優勝狙う帝京大学。
エース不在の法政大学は“山”に活路。
posted2019/12/25 11:00
text by
箱根駅伝2020取材チームhakone ekiden 2020
photograph by
Yuki Suenaga / Nanae Suzuki
帝京大学
第95回箱根駅伝(前回大会):5位
13年連続、21回目
チーム課題の“序盤の出遅れ”克服成るか。
往路での快走目指す次世代エースに注目。
文=和田悟志
もしも箱根駅伝が1区間の距離はそのままに20区間あったら――帝京大学は優勝争いの“ダークホース”ではなく“本命”に挙げられていただろう。それほど今季は選手層が厚く、戦力が充実している。
実際に12月10日のチームエントリーで16人に入れなかったメンバーに目を向けると、10月の板橋区・高島平ロードレース(20km)で優勝した山根昂希(3年)、ハーフマラソンで1時間2分台の記録をもち、11月の10000m記録挑戦競技会では29分15秒19の自己新と調子を上げてきていた田村岳士(4年)といった選手がいる。これまでであれば、主力として十分に活躍できる力を持った選手たちだ。
とはいえ、箱根駅伝を走れるのは、たったの10人だけだ。
帝京大はメンバー選考を兼ねた強化合宿を11月末から約10日間に渡り伊豆大島で敢行したが、最後の25kmの距離走では誰一人遅れることがなく、合宿を打ち上げた。エントリーから外れた選手にしても決して彼らが“不調”だったわけではなく、“好調”の選手を外して16人を選ぶのは、中野孝行監督にとっても苦渋の決断だっただろう。今回の箱根駅伝に向けたチーム内のメンバー争いは、それほど激しいものだった。
星岳「往路を走りたい」
今季の帝京大は「箱根駅伝総合優勝」をチーム目標に掲げている。だが、出雲駅伝7位、全日本大学駅伝は8位と、優勝どころか優勝争いにさえ加わることができなかった。その課題は明らかで、序盤から上位争いに加われなかったことが最後まで響いた。
「2つの駅伝もそうですけど、箱根駅伝も過去2大会、前半から出遅れていた。そこはチームの課題でもあるので、最初から上位で持っていけば、いずれチャンスが見えてくると思う。特に復路には、前回同様に自信があると思うので」
そう話すのは、3年生の星岳だ。バランスのとれたチームだが、優勝候補になかなか挙がらないのは、出遅れた時のゲームチェンジャーになりうる選手がいない点にある。であれば、序盤から出遅れないのが正攻法。星は「往路を走りたい」と、その重責を担うつもりでいる。
星は1年時から主要大会にエントリーされていたが、その年の箱根駅伝予選会では188位に沈み「ロードに弱い」と指摘されていた。結局1年時は、全日本大学駅伝、箱根駅伝本大会と出番はなかった。
だが、2年生になった昨年度は、そのロードに活躍の場を見出した。11月の上尾ハーフマラソンで1時間2分20秒の好タイムをマークすると、前回の箱根駅伝ではアンカーを務め、区間賞の走りで2人を抜いてチームを5位に押し上げた。
「すごく自信になりましたし、自分自身のハードルも高く設けるようになりました。これまでよりも高い競技レベルの練習をしないといけない、試合でも結果を残さないといけないという良い意味でのプレッシャーになっていると思います」
星にとっても、前回の10区区間賞という実績は、自身を成長させるものになった。