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選手層の厚さで総合優勝狙う帝京大学。
エース不在の法政大学は“山”に活路。 

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箱根駅伝2020取材チーム

箱根駅伝2020取材チームhakone ekiden 2020

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photograph byYuki Suenaga / Nanae Suzuki

posted2019/12/25 11:00

選手層の厚さで総合優勝狙う帝京大学。エース不在の法政大学は“山”に活路。<Number Web> photograph by Yuki Suenaga / Nanae Suzuki

「1区でも2区でも戦えるように」

 しかし、さらなる飛躍を誓ったはずが、今季は思うようなシーズンを送ることができなかった。ユニバーシアードの代表がかかった3月の日本学生ハーフマラソンは12位に終わり、5月の関東インカレ(2部)もハーフマラソンで12位という結果だった。7月には初の海外レースとなったゴールドコーストマラソン(ハーフマラソン)に出場したが、慣れない環境に力を出しきれなかった。そして、夏にはケガもあって、出雲駅伝にはエントリーもされなかった。

 それでも、星に焦りはなかった。

「9月に復帰して、ブランクは少しあったんですけど、10月に入ってからは、出雲を走ったメンバーと一緒に練習をこなせるまで戻ってきていて、1週間ごとに調子が上がっていきました」

 そして、11月の全日本大学駅伝は、4カ月ぶりの復帰戦だったにもかかわらず、2番目に距離の長い7区を志願。チームは6区まで2桁順位と苦戦していたが、星は区間6位と好走し、シード権が見える位置まで順位を押し上げ、たすきを繋いだ。さらに、10000m記録挑戦競技会では、28分35秒03の自己新記録をマーク。箱根駅伝に向けて、調子をぐんぐんと上げてきている。

「優勝するなら、復路で逆転する展開になる。往路で前との差を小さくできれば、チャンスは生まれると思います。1区でも2区でも戦えるようにしていきたい」

 と、星は往路でチームを勢い付けるつもりだ。

課題の序盤はチーム全体で共有している。

 もっとも“序盤の出遅れ”という課題はチーム全体で共有しているものだ。課題克服に向けて、主力選手の意識は高く、主将の岩佐壱誠(4年)はエース区間の2区を、10000mの帝京大記録保持者の島貫温太(4年)は、前回6区で好走しているが、1区を希望している。もちろん、チームの選手層が厚い分、その希望通りの区間配置になるとは限らない。

 10000m上位10人の平均タイムは、28分52秒21と出場校の中で5番目。28分台の選手は、島貫、星、岩佐の他に、前回3区3位と好走した遠藤大地(2年)、チームのムードメーカーの田村丈哉(4年)、前々回山上りの5区を走った平田幸四郎(4年)、今季全日本大学駅伝で学生三大駅伝デビューを果たした橋本尚斗(2年)と、計7人もいる。

 その他にも、2年連続で箱根駅伝9区を走っている小森稜太(4年)、ハーフマラソン1時間2分3秒の帝京大記録をもつ小野寺悠(3年)、今季成長を遂げた中村風馬(2年)は、秋に10000mの競技会に出ていないだけで、おそらく28分台を出せる力がある。潜在的には平均タイムをさらに短縮できると見ていいだろう。

 確かに選手層は厚い。これまでと同様に、往路、復路ともに同等の戦力を配すことは可能だ。しかも、昨年度までよりも、さらに一段高いレベルで、だ。

「復路で(6区5km過ぎの前方の見通しが良い地点である)箱根ドールハウス美術館から見えるチームは全部抜きたい」

 中野監督がそんな言葉を口にするのは、復路に自信があるからだ。

 往路を終えて好位置に付けていれば、復路で番狂わせを起こすことは十分に可能だ。

 もっとも、帝京大の選手たちは番狂わせなどではなく、はなから総合優勝するつもりである。

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