炎の一筆入魂BACK NUMBER
再建カープの秋季キャンプ。
野間峻祥の長打力は目覚めるか。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byNanae Suzuki
posted2019/11/26 18:00
2018年は中堅のレギュラーとして規定打席に到達して打率.286、5本塁打、17盗塁とキャリアハイの成績だったが、今季は数字を落とした。
期待の裏返しだった高い要求。
そして、今秋から一軍担当となった朝山打撃コーチの存在もまた、野間にはきっかけとなったように感じる。
2014年ドラフト1位で広島に入団してからずっと大きな期待を背負ってきた。
ドラフト前の映像で指名を熱望した緒方孝市前監督はもちろん、石井琢朗元打撃コーチ(現・巨人一軍野手総合コーチ)も付きっきりで指導したこともあった。今季まで一軍で指導してきた東出輝裕、迎祐一郎両打撃コーチもまた、野間に対する要求は高かった。
それだけのものを期待させる能力を持っているという証しであり、同時に潜在能力を発揮できていないもどかしさを感じさせてしまっていたともいえる。
1年目から127試合に出場した。その後伸び悩みながらも、4年目の昨年は初めて規定打席に達し、打率2割8分6厘と飛躍のきっかけをつかんだ。ただ今年は開幕直後に低調な広島打線の中で孤軍奮闘。開幕当初から適任が見つからない3番として打線を引っ張った。
突き放すことを選んだ朝山コーチ。
それでも首脳陣の求めるものは高く、スタメンから外れる試合も。徐々に出場機会を減らし、打撃状態も下降。気づけば中堅は西川に譲り、途中出場が続く起用となっていた。終わってみれば、123試合出場も、打席数は前年から約100打席落とし、打率も2割4分8厘。ポジションを確保できなかった。
悩みが悩みを生み、本来の良さである思い切りの良さが失われていたのかもしれない。悪循環にはまっているように感じる時期もあった。
一軍の舞台で初めてみっちりと類いまれな能力を持つ野間と過ごした朝山打撃コーチはいい意味で突き放すことを選んだ。
「野間にはいろんな指導者がいろいろ言って、手をかけてきた。ただ、殻を破れないのであれば、好きにやれと言おうかなと。やっぱりスピードがあるから使いたい選手。がんじがらめにせず、思い切ってやれというスタンスに変えようかなと」