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諦めかけた清水邦広を支えた名医。
バレー界に信頼される「荒木先生」。 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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posted2019/11/27 11:30

諦めかけた清水邦広を支えた名医。バレー界に信頼される「荒木先生」。<Number Web> photograph by AFLO

右膝の怪我を克服した清水邦広。右膝の手術を執刀した荒木大輔医師は、多くのバレーボール選手を復帰へと導いてきた。

復帰を説いた膝のスペシャリスト。

 2018年2月18日のJTサンダーズ戦の試合中、スパイクの着地と同時に清水は崩れ落ちた。「右膝から下がぶらんぶらんの状態で、その瞬間に、もうバレーボールは諦めた」と振り返る。病院での全治12カ月という診断も追いうちをかけた。清水はその前年にも、右足の舟状骨骨折で約10カ月間のリハビリを経て復帰していた。その年は代表を辞退し、怪我をしにくい体づくりを徹底的に行って2017/18シーズンに臨んでいただけに、ショックは大きすぎた。

「辞めます。引退します」

 そう言って泣き続ける清水に、荒木は懇々と話をした。自分以外にも膝のスペシャリストを4人呼び寄せ、こう語りかけた。

「確かに前十字靭帯の怪我の中でも大変な怪我だけど、治らない怪我じゃない。手術の方法はいろいろあるので、僕1人じゃなく、みんなで一緒に一番いい方法を考えて、絶対に治すから、だから清水君、今すぐ辞めるなんて言わないでほしい。今すぐ引退しますではなく、一度頑張って復帰してほしい。それで納得がいかなかったら、その時に辞めてもいいから」

 ある意味、その患者の人生を変える、人生を背負うような、そんな熱量を感じる言葉だ。その熱量や覚悟はどこからくるのか聞いてみたかった。

手術には「信頼関係」がないと。

 しかし荒木は、ごく当たり前のことのように淡々とその時のことを振り返った。

「自分は膝の靭帯再建などの手術を担当させてもらっていて、アスリート、一般の方を問わず、いろいろな患者さんを見てきました。その中でも彼の怪我は一番に近いぐらいひどかったんですが、技術的には、今の自分たちがやっている治療を使えば治せるというのは、最初の診察で思いました。ただ、本人にやる気になってもらわないといけないし、清水とは当時、初対面に近い状態だったので、信頼関係を作るためにもいろいろな話をしました。やっぱり信頼関係がないと、手術って、したいとは思わないので。

 ここには膝専門の先生が自分を含めて5人いて、その知恵を持ち寄れば、一番いい治療を彼にしてあげることができるので、他の先生にも来てもらいました。ロンドン五輪の約10カ月前にここで手術して、銅メダルを獲得した大友愛や、井上琴絵(デンソーエアリービーズ)、浅野、それ以外にも手術してVリーグでプレーしている選手がいるから、ちゃんと戻れるよという話もしました。復帰までは本当に大変だけど、自分たちは手術を頑張るから、清水はリハビリをしっかり頑張ってくれたら、もう一度バレーのコートに帰してあげることはできると伝えたら、『頑張る』と言ってくれました」

【次ページ】 アスリートでも、お年寄りでも。

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