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諦めかけた清水邦広を支えた名医。
バレー界に信頼される「荒木先生」。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byAFLO
posted2019/11/27 11:30
右膝の怪我を克服した清水邦広。右膝の手術を執刀した荒木大輔医師は、多くのバレーボール選手を復帰へと導いてきた。
選手のしんどい思いも共有する。
昨年12月に二度目の左膝前十字靭帯損傷の手術を行い、復帰に向けて歩んでいる長岡はこう話す。
「荒木先生はすごく親身になってくれる。私はお医者さんの前で身構えてしまうほうなんですが、荒木先生には、不安なことや気になっていることを、頑張らずに話せます」
患者に対しては、もちろん手術して終わりではなく、復帰までの細かなプランを立てて詳しく説明する。トラブルが起きてリハビリが後戻りした場合も、何一つ隠すことなくありのままを説明し、共に歩んでいく。
「トラブルになると、言いたくないことも山ほどあります。もう一度、全部1からやらなあかんとか。でもやっぱり、事実を全部伝えて、しんどい思いもちゃんと共有していきたいと思っています」
清水は、「きつい状況でも前向きなプランニングをしてくれて、例えば感染症になって後戻りしたけど、復帰は頑張れば1カ月遅れぐらいでいけるとか。曖昧じゃなく、いつも具体的に言ってくれるので、僕たち選手は、じゃあそれに向かって頑張ろうと思える。頑張り甲斐があったし、不安を和らげることにもなっていました」と言う。
焦る清水とマイペースな長岡。
リハビリへの向き合い方は選手によって違う。例えば清水は、「先に先にやりたい病」だと自分で言う。
「まだ足をついたらあかんと言われているのについたり、先生にとっては頭を抱える患者だったと思います」
荒木が説明したプランを、清水はスマートフォンに全部細かく記録し、毎日、日数を数えて、「この日からこれできますよね?」と念押ししてきた。
「いや、それは状態によって、ということやん」(荒木)
「え、この日って言いましたよね」(清水)
そんな問答は日常茶飯事。時には1週間ほどサバを読んで前倒ししようとすることもあった。
逆に長岡は、荒木によると「超マイペース」。荒木が「もうちょっとやったほうがいいんじゃない?」と促すこともあった。そんな時、長岡は「トレーニングはね、言われてやるもんじゃないんです。本人がやらなきゃいけないと感じてやるものなんですよ」と言い返す。しかし一度スイッチが入ると、並外れた集中力と覚悟を見せて荒木を驚かせた。