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堂安律&食野亮太郎をタフにした
G大阪U-23と、育成リーグへの懸念。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/11/25 08:00
G大阪U-23時代に本間勲(左、当時栃木SC)とマッチアップした堂安律。公式戦出場機会を得ることで試合勘を磨いていった。
様々なスタイルの相手と戦える。
迎えた2019シーズン、3月10日に行われたヴァンラーレ八戸との開幕戦で、ガンバ大阪U-23はJFLからの昇格組に苦戦を強いられ、2対2のドローに終わった。
時に荒さもあったヴァンラーレ八戸のコンタクトに手こずったガンバ大阪U-23だが、試合後の記者会見で森下監督は目を輝かせてこう言った。
「彼らにとっては最高の相手ですね。やっぱり僕はこういう相手を求めていたし、トップチームと紅白戦をしても、なかなか空中戦になるボールは出てこないので、どれぐらいやれるのかなと。このリーグで戦うには、やっぱり練習の中でやっていかなきゃいけないなと再認識しました」
J3リーグには、ロングボールを多用するチームがあれば、前線からアグレッシブにプレスを仕掛けてくるチームもあり、様々なスタイルの対戦相手が待っている。しかもJ2リーグ昇格を目指すチームなどは、なりふり構わずにセカンドチーム相手に勝ち点3を取りにくる真剣勝負の連続である。
9月7日にアウェイで行われたロアッソ熊本戦は、その象徴だった。首位争いの最中にあったロアッソ熊本のホームには、16027人のサポーターが集い完全アウェイの雰囲気。先制したロアッソ熊本は、先発の平均年齢が10代のガンバ大阪U-23に対し、試合終盤には虎の子の1点を守るための人海戦術を採用。なりふり構わぬ戦いで守り切ったのだ。
フィジカルと戦術理解度の差を体感。
上野山信行取締役はJ3リーグを戦う効果をこう話す。
「対戦相手にはベテランもいて、いろんなチームと試合ができる経験が大きい。僕はJ3リーグでは負けから学ぶことが大きいと思っている。チームによってスタイルは違う。例えば、勝っている時にリトリートして守ってくるチームもあるし、90分間で試合にいろんな変化があるのが大きい。そういう経験をすれば選手も『えっ』と思うし、思考が回るようになるからね」
上野山取締役の狙いはチーム最年少の16歳にもしっかりと響いていた。
ロアッソ熊本戦で、90分間ピッチに立った中村仁郎は当時35歳の片山奨典とマッチアップ。ロアッソ熊本の堅い守りをこじ開けきれずに、タイムアップの笛を聞いている。
「ユース年代だと、相手に引かれても勝てた試合が多いけど、J3だと打開できずにそのまま終わってしまうことも多い。J3を経験するようになって感じるのは、フィジカルの差と相手の戦術的な理解力ですね」(中村)