濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
アイドル、レジェンドにデスマッチも。
両国3連戦が示したプロレスの多様性。
posted2019/11/15 11:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
DDT ProWrestling
11月2日から4日まで、3日連続で両国国技館で取材した。“両国3連戦”、それも新日本プロレスのような連続興行ではなく、それぞれ別団体のビッグマッチだ。
2日がノア、3日がDDT、4日は大日本プロレス。ノアが両国で大会を開催するのは久しぶりのことだ(昨年は丸藤正道20周年興行としての開催だった)。取材しながら感じたのは、プロレスというジャンルが持つ多様性だ。
そもそもこの世界には「パッケージプロレス」という言葉がある。興行とは単に試合を複数並べたものではなく、全体が1つにパッケージされたショーを理想とするという意味だ。コース料理や松花堂弁当にたとえてもいい。ステーキもサラダもデザートもあるのがプロレス。つまりそれだけ、レスラーの個性やファイトスタイル、試合形式にも幅がある。コース料理も中華やフレンチ、懐石などさまざまだ。
ノアはマット界の保守本流。全日本プロレスの流れをくむ正攻法な闘いを見せてくれる。ただそれは“旧態依然”とイコールではない。両国大会のメインイベントは清宮海斗vs.拳王のGHCヘビー級タイトルマッチ。23歳と34歳のライバル対決は、王者・清宮が30分を超える闘いを制して6度目の防衛を果たした。
ノアの新ベルト、その裏地の色は――。
清宮が王者として掲げてきた言葉は「新しい景色を見せる」。丸藤正道でも杉浦貴でも潮崎豪でもなく、清宮と拳王が両国のメインで闘っている。それ自体がノアの「新しい景色」だった。
この大会から、GHCヘビー級のベルトが新調されている。その裏地は緑色。団体創設者・三沢光晴さんのイメージカラーだ。新しい時代を作りながら、歴史を切り捨てることはしない。そんなノアのスタンスがよく表れていると言っていいだろう。
この日、杉浦はノア初参戦のマイケル・エルガンを下して新設ナショナル王座を獲得。この試合を大会ベストバウトに推すファンも多い。ノアの“象徴”丸藤はグレート・ムタとの初遭遇で楽しげに暴れてみせた。若い清宮がタイトル戦線の中心となり、それでいてベテランが隅に追いやられることもない。そうかと思えば藤田和之や桜庭和志といった“格闘系”も参戦してくる。それが今のノアだ。