ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
オシムが語る台風被害と天皇即位、
アジア人監督が欧州で活躍する未来。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2019/11/14 11:40
ELのグループリーグ戦でマンチェスター・ユナイテッドと対戦したパルチザン・ベオグラードの浅野拓磨。
「即位の礼」の儀式を見て、オシムの感想。
――私はまあ悪くないですがあなたはどうですか?
「こちらは基本的にいつもいいことになっている。誰かにそう聞かれたときの儀礼的な答えだ(笑)。よく食べているし、つつがなく暮らしていると答えている。これから先はどうなるかわからないが。
それから新たな天皇の即位の礼の儀式もテレビで見た。天皇と皇后が微笑んでいる姿はとても良かった。皇室の皆さんはつつがなく過ごされているのか。健康には問題がないのか?」
――ええ、退位された前の天皇も健康ですし、特に問題ないと思います。
「高円宮妃は今もサッカーに関わられているのか?」
――ええ、今でも日本協会の名誉総裁ですよ。彼女もまたつつがないです。
「皇室の方々が健康であれば、日本人も心安らかに暮らしていける。日本が皇室のもとに結束しているのは疑いのない事実であるからだ。それが日本の伝統であり、皇室があることで日本の社会は安定している、と私は思っている」
プロシネツキ監督率いるボスニア代表の成績は?
――ボスニアのサッカーはどうですか?
「チーム刷新のときで、決して簡単ではない」
――プロシネツキはうまくやっていますか?
「勝利に見放され、突破の可能性が低くなったときの状況は日本と同じだ(EURO2020予選グループJで8節を終え勝ち点10でグループ4位。2位のフィンランドとは勝ち点5差で、理論上は2位の可能性を残している)。結果を得られなければ仕事を続けられない。職を解かれるか、自分から職を辞するか。結果が出ていない以上、さらに監督を続けるのは適切ではないと彼は語っている。協会は予選最終戦までは契約を継続し、もし突破したならばその後も継続する意向だ」
――かなり厳しいわけですね。
「私もできることなら彼に続けてほしい。プロシネツキという名前には重みがあるし、監督としてここまでよくやってくれた。選手も彼から多くを学んだはずだ。
ボスニアもようやく目の前の楽しみのためだけにサッカーをするのではなく、明日や明後日のために何をしたらいいのかを、ヨーロッパの他の国同様に考えられるようになった。今日さえ良ければいいのではない。明日のためにどうしたらいいかを考える。
サッカーでは膨大な投資が目先の結果を得るためにおこなわれているが、そうした傾向には歯止めをかけるべきだ。重要なのは明日だ。明日もスタジアムを満員にするためにどうすればいいのか」