ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
オシムが語る台風被害と天皇即位、
アジア人監督が欧州で活躍する未来。
posted2019/11/14 11:40
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Getty Images
時間は少々遡るが、10月末に久しぶりにイビチャ・オシムに連絡をとった。日本列島に訪れた様々な事柄に関して、オシムもきっと多くの思いを抱えているだろうと思ったからだった。
アシマ夫人によると、このところリハビリは順調にいっているとのこと。次々と台風に襲われた日本とは異なり、この秋のグラーツは晴天続き。絶好の散歩日和をしばし満喫しているという。
グラーツの自宅で、オシムが語った。今も心を寄せる日本のこと。ボスニアサッカーのこと。自身のこと。そしてサッカーの未来を。
「市原や千葉の人たちのことを考えると心が痛む」
――元気ですか?
「ああ、君はどうだ?」
――私は大丈夫ですが、日本は大丈夫ではありません。今年は台風が頻繁に日本を襲って、つい最近も大雨で千葉県を中心にさらに被害が出ました。
「日本は常にそうだな……。そうした自然災害と寄り添って生きる以外にない。長い日本の歴史は自然災害の歴史でもある。幸いなことにあなた方はそうした折の対処の仕方をよくわかっている。最大の問題はどうやって防ぐかだが、大きな災害ほど防ぐのは難しい。
特に島国の日本は、四方を海に囲まれてすべてがオープンだ。風はどこからでも吹き込んでくるのだろう。急峻な地形で大雨が降れば水害も激しい。すべてを防ぐのはとても大変だ」
――不可能かもしれません……。
「だからこそうまく対処していく以外にない。残念ではあるが、ときに悲劇に見舞われながら。何が起こるかはあらかじめ予見できないのだから。
亡くなった方々の冥福を心から祈りたい。そして被災された地域のできる限り早くの復興を。市原や千葉の人たちのことを考えると心が痛む。皆さんにくれぐれもよろしく伝えてくれ」
――わかりました。
「それでサッカーはどうなのか?」