ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
オシムが語る台風被害と天皇即位、
アジア人監督が欧州で活躍する未来。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2019/11/14 11:40
ELのグループリーグ戦でマンチェスター・ユナイテッドと対戦したパルチザン・ベオグラードの浅野拓磨。
多くの人たちが混じり合う世界が拡大している。
――代表に関しては順調です。まだワールドカップ2次予選ですが首位をキープして、問題なく最終予選に進むでしょう。
「たしかに日本サッカーはとても豊かになった。これだけ多くの選手がヨーロッパでプレーするのは、私のころは考えられないことだった。日本に限らずアジアの選手も欧州で増えてきた。大きな進歩だ。
そんな選手の中から、常に何人かがプラスアルファを代表チームにもたらす。例えば躍動感や戦いの激しさなども……。だから、日本の試合はいつ見ても本当に楽しい。時が過ぎるに従って、どの試合にも独特な趣が出てくる。ちょっとエキゾチックで、テクニカルであると同時に闘志にも溢れている。
アジアの選手が混ざることでヨーロッパのサッカーもより豊かになったと感じる。同じピッチで一緒にプレーすること、同じ社会に一緒に住むことで世界がより混じりあい活性化した。
こうした混合は必然だ。人はひとりで生きることはできないし、1つの民族、1つの国家が孤立して生きることもできないからだ。多くの人たちが混じりあっていくのは世界の大きな流れだといえる。サッカーもその方向で進化して、これからもずっと豊かであり続けてほしいと思っている。
それで……日本にも新しい選手は出てきたか?」
パルチザン・浅野拓磨の活躍を褒める。
――若い世代は伸びています。10代にしてヨーロッパで活躍する選手が出てきました。あなたの周囲だと、南野拓実はずっとザルツブルクですし、この夏には浅野拓磨がパルチザンに加入しました。
「パルチザンの試合は昨夜見た。ヨーロッパリーグのマンチェスター・ユナイテッド戦だ。髪を白く染めていたのが浅野だろう。スピード豊かで機動力もありよく戦っていた。相手ディフェンスとの戦いでも決して負けていなかった。
パルチザンでこれだけのことができるのだから、さらにこれから進歩していくのは間違いない。選手をどう発掘したらいいかといういい見本に彼がなっている。彼が加わったことでパルチザンはよりダイナミックになり、プレーにスピードと躍動感が生まれた。
そうした彼の良さを、日本代表でもさらに活用できるようになることを望む。それで日本はさらに進化できるのだから。
同じような可能性は中国のサッカーにもある。日本の十倍の人口を中国は抱えるのだから、量的な観点からポテンシャルは大きい。今ではヨーロッパサッカーへの関心も高まったと聞く。日本はここまで進歩したが、その後に続くのは中国なのかインドなのか……。韓国はすでに高いレベルに達しているが、さらに発展していって欲しい。
ところで君の身体は大丈夫か?」