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外国人フォトグラファーが厳選する
ラグビーW杯決勝の「表」と「裏」。 

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涌井健策(Number編集部)

涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui

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photograph byDavid Ramos/Getty Images

posted2019/11/10 11:50

外国人フォトグラファーが厳選するラグビーW杯決勝の「表」と「裏」。<Number Web> photograph by David Ramos/Getty Images

水着姿でカップにキスをする南アフリカの司令塔、ファフ・デクラーク。縦横無尽に走りまわるSHに、ジャパンも苦しめられた。

勝者と敗者にあった大きな壁。

<ショーン・ボテリル選2>

 後半34分、チェスリン・コルビがトライで得点をした後の歓喜の瞬間だ。この写真は決勝戦における両チームのパフォーマンスを端的に表している。拳を上げ歓喜に沸く南アフリカのコルビと、落胆するアンソニー・ワトソン。両選手の内なる感情は“天と地”、両極端だろう。優勝を確信し喜ぶコルビと、優勝から一気に遠のいてしまい地面を見つめてしまうワトソンが印象的だ。

<マイケル・スティール選1>

 終了のホイッスルが審判のジェローム・ガルセスによって吹かれた直後の、両チーム。南アフリカの優勝が決まった喜びと大敗したイングランドの絶望、両極端の反応がとても印象的だ。南アフリカでも喜びのあまりなのか、疲労のためなのか、地面にうずくまってしまっている選手もいた。

血まみれのユニホーム、掲げられたカップ。

<ショーン・ボテリル選3>

 表彰式で落胆するイングランドの選手たち。このシーンからも、試合がどれほど過酷であったかがわかる。血まみれのユニフォームを着たビリー・ブニポラらが整然と列になり、トロフィーの横を通り過ぎていく。彼らの視線は、黄金に輝くウェブ・エリス・カップに向くことはない。優勝までの道のりがどれだけ過酷であり、優勝と準優勝の間には大きな壁があることが、この1枚からひしひしと伝わってくる。

<マイケル・スティール選2>

 南アフリカのキャプテン、シヤ・コリシがウェブ・エリス・カップを持ち上げようとする瞬間だ。かつての南アフリカではラグビーは白人のスポーツと言われていたが、今では白人、黒人、人種に関係なく国を背負って戦っている。コリシを中心とした選手とコーチ陣が歓喜に沸く様子をスタンドから撮影したことで、肌の色を超え、チーム一丸となって優勝したことが一目瞭然になった。歴史に残るシーンだと感じる。

 優勝カップを掲げるシーンについては、フランソワ・ネル氏からもコメントが届いた。

 過去に優勝したチームの中で、あんなにも謙虚で、感動と勇気を人々に与えたキャプテンはいなかっただろう。シヤ・コリシ、黒人初の主将となった彼へのプレッシャーは想像できないほど大きかったはずだ。昨年からW杯開幕まで、スプリングボクスの世界ランキングも落ちていったが、彼らがコリシを中心にハードな練習をし続けてきたのを知っている。めざましい回復を遂げ、彼らはラグビー史上最高の名誉を手に入れたのだ。

【次ページ】 陽気なムボナンビ、クールなデクラークは?

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