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中田翔、山田哲人を伸ばした育成論。
三木肇が楽天の監督として目指す物。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2019/11/04 19:00
目の前の選手が、どうすれば大きく育つか。三木肇監督の目は常に現場に向いている。
中田翔や山田哲人を育てた方法。
「例えば、10球のうち1球でも全力でバットを振らなかったら、1個のマイナスになるじゃないですか。そのマイナスが積み重なったら、バッティングかもしれないし、もしかしたら他の部分でも大きな損失に繋がるかもしれない。そういうのがもったいないなって思うから、選手に気づかせたいんです。
常に客観的に自分を見つめて、人が気づかないことにも目を向ける。そういうのって、本当に小さなことかもしれないけど、いつか必ず役に立ってくるから」
三木にとって「微差は大差」を選手に気づかせる第一歩が、豊富な会話となる。
日本ハム時代なら、当時、鳴り物入りで入団してきた中田に「俺と交換日記しよう」と、野球日誌をつけさせた。大物ルーキーの人には言えない苦悩を知り、寄り添い、時には叱咤しながら前を向かせた。
ヤクルト時代であれば、打撃に傾倒していた山田に、「守備や走塁にも力を入れたら、お前はとんでもない選手になると思うんだけどなぁ」と、ソフトに促しながら興味を植え付けた。いざその意識が芽生えれば、「お前が『もう嫌や!』と言っても止めないからな!」と、マンツーマンで特訓に付き合うことも珍しくなかった。
もはや、会話ではなく格闘である。
選手の心を動かせれば、方法は何でもいい。
山田が「三木さんがいなかったら、今の自分はいませんね、確実に」と断言していたように、三木は微差を大差にしてきた実績がある。それが、自身の指導の裏付けとなり、矜持にもなっているからこそ、選手とのコミュニケーションは重要なのだと、三木はこの話題になると言葉に熱がこもる。
「ベラベラ喋ることがいいとも思っていないけどね。ちょっと偉そうですけど、一番大事なのは『選手の心を動かせるかどうか?』ですよね。
毎日話すこともあれば、少し距離を置いてから、じっくり話し込むことがあってもいいだろうし。僕ら指導者は、選手が頑張れる環境をどう作れるか? を常に考えて行動しないといけないと思うんですよ」