プロ野球亭日乗BACK NUMBER
サイ・ヤング賞より歴史ある沢村賞。
「該当者なし」でも規定は変えるな!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2019/10/25 20:00
昨年は巨人の菅野智之投手が全項目をクリアして、2年連続で沢村賞を受賞した。
無理して受賞者を選ぶ必要はない。
「時代が変わるから(選考基準も)変えようという考えはない」
「これ以上、レベルを下げたくないというのは本音。完投なしでいいよとなると、沢村さんの名前に傷をつけると思っている」
これも1つの定見だ。
その上で1つだけ言えるのは沢村賞の権威を守るためには、少なくともこの7つの選考基準がある間には、無理して受賞者を選ぶ必要はないということだ。基準をクリアできる選手がいないからと、ゴールポストをずらして、完投数0でも選ぶのではかえって賞の価値を下げるだけである。
投手の肩肘の故障防止という観点も含めて、改めて基準の緩和をするのも、沢村賞という権威ある賞を活性化していくためには、1つの手段でもある。セイバーメトリクス全盛の時代に、古臭い基準が跋扈しているように思えるかもしれないが、それもまた、まさに「沢村賞」なのである。
サイ・ヤング賞より歴史は長い。
1947年設立はサイ・ヤング賞が制定された1956年より9年早い。その長い歴史の中で築き上げられてきた基準は、古臭くともまた同賞の権威を支えるものでもある。
だから何ならこれから10年間、「該当者なし」でもいい。そうして10年後に10完投して基準項目を6つも7つもクリアする投手が出てきたら、それはそれで素晴らしいことではないだろうか。
先発完投型の投手を表彰する「沢村賞」とは、まさにそういう賞ではないだろうか。