“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
心臓手術を乗り越えた武田英二郎。
横浜FCの中間管理職が感じる恩義。
posted2019/10/18 15:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
プロ9年目。1988年7月11日生まれの31歳。
横浜FCのDF武田英二郎はプロサッカー選手で言うとベテランの域に差し掛かっている。
J2第36節、横浜FCvs.ツエーゲン金沢の一戦。左サイドバックとしてスタメンに名を連ねた武田は、ふと両チームのメンバー表を見てあることに気づいた。
「ツエーゲンのスタメンを見たら、最年長がMF清原翔平さんで32歳、次が僕と同じ歳のGK白井裕人さんだった。ベンチを見ても1学年上のDF作田裕次さん。それ以外は、全員僕より年下だったんです。『あ、俺ってやっぱりベテランなんだ』と思ったんです」
対する横浜FCのスタメンは、40歳のGK南雄太が最年長、次いでMFレアンドロ・ドミンゲス(36歳)、さらにFWイバ、DF伊野波雅彦(共に34歳)、カルフィン・ヨン・ア・ピン(33歳)、横浜F・マリノスユースからの同級生であるDF田代真一とベテランぞろいだ。ベンチに目を向ければ、言わずと知れたスーパースターのFW三浦知良(52歳)。また、この試合はベンチ外となったが、MF中村俊輔(41歳)、松井大輔(38歳)もまだまだ健在である。
「この歳で上がこんなにもいるって凄いことですよね」
攻撃陣には有望株が揃う横浜FC。
その一方で、攻撃陣は多くの若手選手が揃うのが横浜FCの特徴だ。MF齋藤功佑(22歳)、大卒ルーキーのMF中山克広(23歳)、仙台大学4年生の特別指定選手であるMF松尾佑介(22歳)らはすでにスタメンに名を連ね、ベンチでは下部組織の最高傑作と呼ばれる18歳のFW斉藤光毅が出番を待つ。
「ここでは本当にお手本になるような偉大な年上の選手たちがたくさんいるので、下に示すよりは、上を見て学ぶという気持ちの方が強い。だからか、自分がベテランという意識はあまりなかった。でも、今日のメンバー表を見て、改めて自分も先輩たちのように背中で示していかないといけないんだなと、ふと思ったんです。
自分には何ができるか。僕はいろんなチームを経験している分、どうすればチームに貢献できるかを考えながら過ごしてきた。毎日のトレーニングに100%の気持ちで挑む姿を持ち続けること、積極的にコミュニケーションをとることで、プレー的にも精神的にもサポートできるのかなと。僕はいわばこのクラブでは会社で言う『中間管理職』の役割だなと気づいたんです」