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クラブ史上最高からの転落劇……。
トッテナムに必要なのは断捨離だ。
posted2019/10/16 19:00
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph by
Uniphoto Press
4カ月ほど前、トッテナムは充実した2018-19シーズンを終えた。
新スタジアムの建設費用が嵩んだ結果、誰ひとりとして補強できなかったにもかかわらず、チャンピオンズリーグではクラブ史上最高のファイナリストにまで登りつめた。最終的にリバプールに敗れたとはいえ、その闘いは称賛に値する。
ハイライン・ハイプレス、試合中の陣形変化など、マウリシオ・ポチェッティーノ監督が5年の歳月をかけて植えつけた組織力が世界でもトップランクであることを、満天下に知らしめた。しかし……。
「チャレンジのタイミングが訪れた」
クリスティアン・エリクセンが移籍を示唆した。アヤックスからトッテナムに移籍して6年、ある程度の答は出せた。いまこそステップアップのチャンス、と考えたのだろう。この判断は選手として当然だ。現状維持は退歩につながるケースもあり、年齢(27歳)を踏まえてもまさに頃合いだ。もちろんトッテナム上層部は慰留に努め、好条件のオファーを提示したが、エリクセンは承諾しなかった。
エリクセン残留とケインの言葉。
だが、他クラブとの交渉は遅々として進まない。
やれレアル・マドリーだ、やれユベントスだ、マンチェスター・ユナイテッドが再建の切り札として狙っている……。メディアは「エリクセンの移籍近し」を臭わせたものの、具体的な条件を提示してきたクラブはなかったという。
トッテナムのダニエル・リービー会長がプランを誤ったのか、エリクセンのエージェントを務めるマーティン・スクーツが吹っ掛けたのか。いずれにせよ、この案件は想定外の結論に至った。
チャレンジを望んだ選手が残留しても、元の鞘に収まるわけではない。ステップアップを目論んだにもかかわらず失敗したのだからモチベーションは低下する。周囲は「あいつ、出ていくはずじゃなかったのか」と首を傾げ、昨シーズンまでのようにはうまくいかない。
「一度は裏切った選手をなぜ使うのですか」と、不満を露わにする者もいるだろう。実際、ハリー・ケインも次のように語っている。
「退団を望んでいた選手が残ったのだから、うまくいくはずがない。何人かの選手は違う方向を向いているのだから、勝てるはずがない」