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伊藤拓摩、バスケ指導者が米国修行中!
「でも日本人ってシュートを狙わない」
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byYoko Miyaji
posted2019/10/23 08:00
コーチと言っても、単に選手の練習の管理だけでなく、仕事は多岐にわたる。そのすべてが伊藤拓摩の糧になっている。
「もし海外挑戦するならサポートしたい」とも。
もっとも、伊藤がアルバルク東京のヘッドコーチを解任されたのは、Bリーグ初年度の優勝を逃したからではなかった。実は優勝どころか、まだレギュラーシーズンを戦っている最中に、シーズン後の解任を告げられたのだ。
「(2017年)4月半ば頃にチーム側から、結果に関わらず、来季は新しい体制でいきたいと言われました」と伊藤は振り返る。
解任通告の一方で、チームからは「もし海外に挑戦するならサポートしたい」とのオファーをもらっていた。それでも気持ちを切り替えるのは簡単ではなかった。シーズンはまだ続いており、自分の進退がチームに悪影響を与えてはいけないとの思いもあった。しばらくはまわりの誰にも、家族にすら打ち明けられなかったという。
「2週間ぐらいもやもやしてから、家族に言って、アシスタントコーチ陣に伝えて。こういう状況だけど、切り替えるしかないなっていう感じでしたね」
アルバルクは「日本のバスケットを引っ張る」。
アメリカに再び戻ってコーチングの勉強をしたい、知識をアップグレードしたいという気持ちは以前から持っていたという。とはいえ、コーチをしながらではその道を模索する時間的な余裕もなかった。そういった意味では、いいチャンスではあった。
伊藤はコーチ退任後、1年余の準備期間を経て、2018年秋に渡米した。
知り合いのつてなどを使っていくつかのチームや関係者に当たった結果、ダラス・マーベリックス傘下のGリーグ・チーム、テキサス・レジェンズが受け入れてくれたのだ。レジェンズの本拠地、テキサス州フレスコの近くにトヨタの北米本社があったことも有利に働いた。
肩書はアシスタントコーチ。といっても、GリーグではNBAのように役割や仕事がはっきり決まっているわけではない。シュート練習のリバウンダー役から、ワークアウトのサポート、対戦相手のスカウティングまで、ヘッドコーチから頼まれたことは何でもやる。遠征はすべて同行する必要はなく、その間に気になるチームの練習を見学させてもらうなど、自分の勉強に時間を使うこともできる。昨シーズンは八村塁がいたゴンザガ大の練習を見学した。
研修として送り出してくれたアルバルクにも、選手のスカウティングレポートに加え、アメリカで見聞きしたこと、考えたことをレポートとしてまとめ、今後に向けての提案も積極的にしているという。
サマーリーグ中は、マブズのサマーリーグ・チームに入った馬場雄大(元アルバルク)の通訳としてサポート役を務めた。
「アルバルクの活動理念のひとつとして、日本のバスケットを引っ張る(『バスケットボールの強化に努め、アルバルク東京が活躍することでリーグ、バスケットボール界を牽引します』)っていうのがあるので、僕もアルバルクに貢献し、日本のバスケットに貢献したい。僕がアメリカに来たことに、ちょっとでも価値を感じてもらいたい。僕としては、こういう人が必要だと思って、次の人に新しい仕事を作れるのが理想なので」