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サモアを押し込んだ歴史的スクラム。
ヒーローはいない、ONE TEAMだ。 

text by

多羅正崇

多羅正崇Masataka Tara

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photograph byNaoya Sanuki

posted2019/10/06 12:20

サモアを押し込んだ歴史的スクラム。ヒーローはいない、ONE TEAMだ。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

サモアに押し勝ち、常に走る。この日のジャパンフォワード陣は凄まじかった。

蹴れば、試合は終わっていた。

 サモア投入のスクラムで再開されると、80分を知らせる銅鑼の音が場内に響いた。直後、日本は反則を犯し、サモアにフリーキックが与えられた。

 ここでサモアがボールを蹴り出せば、31-19のまま終了していた。日本のボーナス点獲得もなかった。

 しかし南海の戦士たちはそうはしなかった。豊田自動織機でプレーする日本通、サモアのトゥシ・ピシは勇ましかった。

「リーダーの間で話し合って『スクラムにしよう』と。その判断に迷いはありませんでした」

サモアは100メートルの逆襲を決意した。

 世界中のプロリーグに代表候補が散らばるサモアは、6月上旬にようやくW杯チームが始動した。遅れて参集する者もおり、W杯開幕の2週間前、9月7日の豪州戦で初めてW杯チームでプレーしたピシもその1人だ。W杯での連携不足は否めなかった。

 それでもサモアは最後まで猛々しかった。体力的に厳しい後半72分にはビハインドを7点(26-31)に縮める1トライ1ゴールを奪取。

 この日1トライと5本のプレースキックを決め、サモアの全得点を記録したCTBヘンリー・タエフが明かした。

「サモアのラグビーというと、後半にバテるイメージがある人もいると思いますが、トレーニングキャンプではフィットネスにかなり注力しました」

 運動量に自信があった。1トライ1ゴールを奪えば26-31となり、7点差以内の負けに与えられるボーナス点1が手に入る。プール戦敗退を土俵際で食い止められる――。かくしてサモアは、自陣ゴール前から100メートルの逆襲を決意した。

【次ページ】 突如訪れたラストアタックのチャンス。

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